屋敷内につくと宇髄はすぐメイドを呼んで庭に落ちてきた破片を片付けるとともに各部屋に飾ってあるガラスの短剣を片付けるように命じる。
と、状況を理解した禰豆子が聞くと、宇髄は渋い顔でうなずいた。
「あ~…この島は人魚島だからな。
元々はそれにちなんで人魚姫の短剣になぞらえたガラスの短剣がリビングに飾ってあんだよ。
で、それのレプリカが全部の部屋に飾ってある。
たぶんな、落ちてきたのはそれだ。
位置的には…たぶん空き部屋になってる部屋のもんだな」
「…それって誰かが落としてきたってこと…ですよね?」
「ま、そういうことになるな」
「…もしかして…私に?…恨み買ってるせい…?」
身に覚えがありすぎて青ざめる禰豆子。
前回の箱根の別荘では殺人事件が起きたとはいえ錆兎が前面に立つ形だったので禰豆子に直接的に何か攻撃が向けられるようなことはなかった。
だが先ほどのあれはどう考えても自分を狙ったものだと禰豆子は思う。
少なくとも宇髄はこの別荘の提供者で元々は禰豆子と揉めていた古手川も資産家の跡取りの宇髄とは懇意になりたがっているし、古手川に邪険にされたその取り巻き達にも親切に手を差し伸べているので恨まれる要素はない。
そして義勇は好かれる要素まではないにしても錆兎と一緒にちらりと顔見せをしたくらいで恨まれるような要因ができるような時間はなかった。
前回のように殺人事件まではいかないにしても、何か攻撃をされることはあるのかもしれない…そう思うと気丈な禰豆子もさすがに恐ろしくなる。
思わず身震いする禰豆子。
だがそこで義勇をとりあえず下ろした宇髄がポンポンと禰豆子の頭を軽く叩いた。
「ま、大丈夫。
うちの別荘に居る間は色々が俺の責任だし、何かあっても守ってやるから。
お前の兄貴も善逸もいるし、俺はデキる男だしな?
さらに言うなら世界最強の会長様も来てるんだから心配すんな」
前回に続いて他を巻き込んでトラブルの中に飛び込んだ自分の向こう見ずさを思い切り後悔した禰豆子だったが、その心境を察した宇髄のフォローに安心するとともに本当に泣きそうになった。
コクコクと頷く禰豆子。
そうして深刻になりかけた空気だったが、そこで今まで黙っていた義勇の
「…なんで俺が頭数に入ってないんだ」
という不満げな言葉にあふれかけた涙もぴたりと止まる。
宇髄と禰豆子、二人がぷくりと膨れる義勇に視線を向けた。
噴き出す宇髄にさらに膨れる義勇。
その様子はなんだか末の弟の六太を彷彿とさせて思わずお姉ちゃん魂が沸き上がった禰豆子は、
「うん。義勇さんもほんっとに頼りにしてますからっ」
と、むしろ義勇にとばっちりが行かないように守ってやらないと!と内心思いながらも口では思わずそう言って宥める。
宇髄に不満げな顔をしていた義勇もその禰豆子の言葉に
「錆兎ほどじゃないけど俺だって禰豆子のことくらいちゃんと守るから」
と、満足げにムフフっと笑った。
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