寮生は姫君がお好き915_終戦

村田から金竜寮長が虎の寮長組に捉まったと連絡があったのは、それから十数分後のことだった。


──ブレスは渡すから手を出すなと言われて静観しているんだけど、これはずっと放置で良いの?

と、聞いてくるのは、おそらく童磨あたりが銀虎の姫が負わされた怪我を10倍返しくらいにはしているからだろう。

──まあ、死なない程度ならいいんじゃないか?これ、そういうイベントだしな?

と、錆兎がそれに返すと、別に暴力に心配したわけではなく、単純に錆兎の意志を確認したかっただけらしい村田は

──そうだね。じゃあ俺らはブレスだけ受け取って先に帰るね。
と、あっさり無線を切った。

ということで、このイベントの終了条件は開始後3日間経つか、あるいは脱落した寮以外のすべての寮が終了を受け入れるかなので、これで決着は全てついたと言っていいだろう。

あとは普通に陣地に戻って、同じく金竜潰しの現場から帰還する銀竜の村田と銀狼寮の陣地を守っている不死川、そして錆兎が終了宣言をすれば良いだけなので、もう陣地に戻ってもいいだろう。

あと、未定の事と言えば順位の事くらいか…


「とりあえず…金竜が持ってたブレス3つは無事回収したらしいから、俺たち3寮は自寮のブレスは2つずつ、その他6つのブレスを回収したわけだ。
どう分けるかな…
うちは1位の分をもらうことが条件だったから、3つもらうとして5つ。
あと3つを2対1で、4つと3つで、2位3位だな」
などと言いながら、錆兎はひょいっと姫君を横抱きに抱える。

それを見て当たり前に駆け寄って来て義勇が敷いていた錆兎のマントの埃をはたいたうえで錆兎に羽織らせる茂部太郎。

モブ三銃士は確かにすごく強いとかではないのだが、忠実なのと、そのあたりの必要なことをさりげなくこなしてくれるので、本当に得難い人材だ。

そういう意味では身内ですら敵が混じっていて気の抜けない不死川と違って、自分は寮生にも恵まれていると錆兎は思っている。



こうして姫君を姫抱きにして凱旋すると、まず出迎えた炭治郎が目を丸くした。

「どうやって義勇さんを連れ出したんだ、錆兎」
と言うので錆兎は
「最初から?
まあ詳しく知りたいならあとでな?
とりあえず村田が戻っているなら先に話し合うこと話し合って終了宣言してしまったほうが色々安心だろう」
と、そのまま陣地内へ。

そして炭治郎と同様に驚く寮生達の間を抜けながら、奥の姫君の間に足を踏み入れた。

「へ??」
と、まず義勇を抱いて戻ってきた錆兎に、不死川はバッと後ろの隠し部屋を振り返り、そしてまた前方を向いて
「あ~…すっかり騙されたわ」
と苦笑。

善逸も村田も同様に驚いているが、無一郎だけは驚いたフリのようで、目が笑っている。


「まあ、知りたければ詳細はあとでな。
それより終了宣言出してしまいたいんだが、その前に順位な?
今同盟寮以外のブレスが6つ。
悪いが最初の契約だからうちはそのうち3つ取って優勝もらうな?
で、あとの3つをどうする?
どちらかが2つで2位、で、もう片方は1つで3位だが…」

「あ~、じゃあジャンケンでいいんじゃね?
恨みっこなしってことで」
と、それに即そう提案する不死川と了承する村田。
そして結局不死川が勝って金狼が2位、銀竜が3位となった。


それで即、脱落していない3寮で揃って終了宣言。
その後、寮生は陣地の片付け。

寮長達はお疲れであろう姫君を休ませるという名目の元、護衛として一足先に各寮に帰る。

…そう、表向きは……








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