寮生は姫君がお好き911_金竜陣地にて

この姫君戦争の最大の難関は、3年の2寮の寮長が去った時点でクリアしたと言ってもいい。

1対1ならどの寮長が来ても負ける気はしないし…と、錆兎はとりあえず胸をなでおろした。

とりあえず銀竜の寮長村田が銀狼生の補佐を受けながら、こっそり金竜の動向を探っているはずである。

なので錆兎はまず初めに金竜の陣地に姫君のブレスを取りに行くことにした。

本来は先に寮長をどついてから…と、まさに去年の銀虎の宇髄のような戦いをしたいところなのだが、金竜の寮長に関してはもう姫君のブレスを取られても良い前提で逃げ回っているのだろうから捕まえるのに時間がかかりそうだし、自分達が行かなければ怒り狂った虎達に殴り込みをかけられるだけだろうから、そのくらいならこちらに穏便に渡してもらう方が良いだろう。

ということで、まずは金竜陣地攻め。
それが終わったら村田に居場所を特定させている金竜の寮長狩りだ。


3年生寮の先輩方には一番許せない形で裏切られたことに対しての報復をさせてやりたい気はするのだが、金竜寮長が持ち歩いているブレスはおそらくすでに奪取した金銀虎の姫君の物と本人の物も併せて3つ。
一方で錆兎が手にできるのは、味方の2寮の分を各2つの計4つを引くと手に出来るブレスの残りは8個で、4つで過半数なので、この3つを取られてしまうと優勝ができなくなる可能性がある。

なので、まあ、金竜に関しては少しばかりきつく殴っておくということで勘弁してもらおう。


ということで、とりあえずは金竜陣地にGO!だ。
と、当初の予定通り錆兎は金竜の陣地へ向かった。

自分以外の5人の寮長のうち、虎の2寮はそれぞれ自分の陣地で、金竜寮長は虎2寮の姫君のブレスを奪取するつもりが銀虎の煉獄に返り討ちにされて逃げ帰り、金虎の姫の分のブレスだけを持って銀狼の陣地へ。
そして銀竜の村田はその金竜寮長を追走。
金狼の不死川は銀狼の陣地に詰めている。
というわけで、他の寮長はいないはずだ。

案の定、金竜には連絡用くらいのわずかな手勢しか残っていなかった。

攻めてきた錆兎に少しざわつきはしたものの、残ったわずかな兵では迎撃は無理だとはなから諦めて、それでも姫君を護衛するように囲みながらの体面と相成る。

銀竜の姫君は錆兎を見るなり、吐き捨てるように息を吐き出した。

「あ~、うちの馬鹿相方、今年もっ?!
寮長が姫君守る気が欠片もない寮って他にないわよっ!
自分で守れっつ~んならせめて兵くらいおいていきなさいよねっ!!」
と、次の瞬間いっきに愚痴られて錆兎は苦笑する。

まあ、ここで怯えて泣かれるより怒鳴られるほうが気は楽だ。

「まあなぁ。
とりあえずな、おたくの寮長は虎2寮の寮長をだまくらかして虎組の陣地攻めて姫君のブレス強奪する予定らしいから、ここに来る相手が先輩達だとブレス渡すだけじゃすまないと思うし、大人しく俺に渡しておかないか?
俺は別に遺恨も何もないからもらったら大人しく帰る」
と、ぽこぽこ怒ってる金竜の姫君に言えば、

「あいつに会ったら、こんなもんより寮長ならまず姫君守れ、このクソ野郎って言っといてねっ!」
と言う言葉と共にブレスレットを投げつけられる。

「了解。
一応ブレスの有無の詐称はNGだから、門前の兵にすでに金竜の姫君のブレスは奪取されてるって言わせれば先輩方もそれ以上ここに押し入ってはこないとは思うけど、俺も宇髄達に会ったら殴るなら寮長の方だからとは言っとくな?」
「ああ、もう遠慮なく殴り倒せって言っておいて」
「りょ~うかいっ!」
と、金竜の姫君とは全く揉めることなくそんな会話を交わして謁見の間を後にする。

まあ…戦略大会などと言われると、男としては勝ちを狙いに行きたくはなる。
でもこれはそれでも“姫君戦争”なのだ。

寮長を含めた寮生全ては姫君を守り敬うために存在するという前提は変わるわけではない。
姫君を犠牲にしてまで勝利を追ってはダメだろう…と、そんなことを考えつつ、ついさきほどまで金竜の姫君がはめていた腕輪を手に門を出た錆兎は、そのすぐ前にいる面々を目に止めた瞬間、ぎょっとして足をとめた。









2 件のコメント :

  1. 流石、ゴリプリこと次期皇帝煉獄さん返り討ちにしましたか( *´艸`)

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    1. やはりここで大人しくブレスを強奪されるわけはなく…
      なにしろ姫君というより皇帝見習いなので😁

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