──あのね、モデルが必要なの…
と、それは禰豆子からのお願い電話に喜んだ善逸が、『なになに?俺に出来ることならなんでも言ってっ』と内容も聞かずにすでに了承したことで禰豆子から返ってきた言葉である。
と、そのあたりはブサメンではないし、まあ一般的には顔立ちも悪くはないが、際立っているわけではないという自覚のある善逸としては当然の言葉だ。
──うん。錆兎さんと…義勇さんに頼んでもらえないかな?
と、そこで禰豆子から返って来てもそれを当然と受け止めるのが善逸である。
──あ~、なるほどね。うん、いいよ。頼んでみるよ。
──ありがと~!!善逸さんっ!!
喜ぶ禰豆子の様子に喜ぶ善逸。
しかし彼はとてもとても繊細な性格だ。
──あのさ、一応なんだけど…そのモデルについて詳しい状況も教えてくれる?
と、錆兎達に頼むに当たっての説明責任も忘れない。
自分は完全に禰豆子に寄り添いながらも相手に対しても依頼するならきちんとした説明をという、見かけによらず律儀な性格なのである。
そこでとりあえず了承してもらえたことで安心した禰豆子から説明が入った。
「合唱団でお世話になった遥さんていう城上大の学生の先輩からのお願いなんだけどね。
美術とか家政とか映像とかを専門としている大学生の人たちが集まって、就職活動の時とかに使うようにってことで映像作品を作ることになったんですって。
遥さんは音響を担当している同じ大学のお友達から頼まれて縫製のお手伝いで参加。
で、色々集めてたんだけどモデルが足りないってことになって、私の所にモデルをやらない?ってお話が来たの」
「さすが禰豆子ちゃんっ!!やっぱ可愛いもんねぇっ!」
と、即返す善逸。
しかしすぐ
「じゃあ何故錆兎と義勇ちゃん?禰豆子ちゃんがモデルなんでしょ?」
と聞いてくる。
「うん、モデルはね、男女二人ずつ必要なのね。
で、一人は私が頼まれて、他が決まってないって言うから、監督役の大学生との顔合わせの時にもし他にいないならお兄ちゃん紹介しましょうか?って言って写真見せたら
『この子はぎりぎり使ってやってもいいけど、男の方は不可だろ。
それならまだ俺がやった方がマシだな
城上大程度の二流大の人脈では所詮二流のモデルしか集められないんだな』
とか言われて腹がたって、
『なら、絶対に文句なんか出せないほどの最終兵器投入しますっ!!
あなたなんかより一万倍はカッコいい人に伝手がありますからっ!』
って啖呵切っちゃったの…。
でも…お兄ちゃんだって別に普通にカッコいいもん!」
と、その禰豆子の言葉で、善逸は絶対に錆兎達に頼んでやろうと心に決めた。
そう、禰豆子が暴走するのはいつだって自分ではなく大切な家族をバカにされた時なのである。
しかし
「それでね…あと一人の女性のモデルはその監督役の学生の女友達を連れてくるらしいんだけど、どうせならモデル全員こっちで用意したいなぁと思うのよね…。
善逸さん、あと一人、女性モデルの伝手もないかしら?」
と、さらにそう言われて善逸は少し悩む。
正直自分はそんな伝手はない。
というか、錆兎達以外に美形に伝手はない。
まあ錆兎と知りあってからはなんだか他にもその関係の美形キャラと知合いはしたのだがみんな男だ。
いやっ、待てよっ?…それだっ!!
──あっ!頼める先があるかもっ!!ついでにお願いしておくねっ!!
と、そこで善逸は思いついて請け負った。
そうだ、絶対になんとかなるっ!!
彼に頼めばいいっ!!
そう思って、善逸は禰豆子との通話を終えると錆兎よりまずとある人物へと電話をかけたのだった。
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