え?なにこれ……
鬼の首を斬る仕事についてもう何年も経つ。
お世辞にも美しいとは言えない光景を見るのももう慣れっこだ。
それでも目の前の肉色の塊はグロい。
正直気持ち悪い。
そんな感性が自分にまだ残ってたんだな…と感心しながら、村田は周りの様子を窺った。
それに寄り添う伊黒。
ああ、ここは本当に微笑ましいよな…と、グロの合間に見たなんだか美しい風景に現実逃避をしかけてしまう。
意外なことに胡蝶カナエ&カナヲの師範&継子組は顔色一つ変えていない。
むしろ宇髄と不死川兄弟が地味に嫌そうな顔をしていた。
悲鳴嶼は目が見えないので関係なさそうで、無一郎は無表情だが、言葉では
──…キモ…
と不快感を表明している。
もう思い切り現実逃避の方向に傾きかけていた村田だったが、そこでいきなり集団から飛び出たのが愈史郎だ。
──珠世様っ!今お助けしますっ!!
と飛び出す彼の視線の先には肉の塊に埋もれかけている珠世の姿。
愈史郎の声で気づいたのか、珠世は
──早くっ!薬が分解されてしまう前に早く無惨をっ!!
と、自らの身に構うことなく焦ったようにそう言うが、近づいた愈史郎に肉の塊が襲い掛かる。
──水の呼吸 拾壱ノ型、凪っ!!
と、村田は条件反射で駆け出しながらそれを防いだ。
それが戦闘の合図だった。
肉の塊のようなものは無惨を守る繭のようなもので、無惨はその中で毒の分解作業をしていたらしいが、繭のまま攻撃を受け続けるのは得策ではないと判断したのだろう。
──貴様らなど秒で粉砕してくれるわっ!
と、先に村田達を倒したあとにゆっくりと作業を続けることにしたらしい。
肉の繭にぐにゅりと裂け目が出来てそこから一人の男が出てきた。
それは顔は確かに無惨なのだが、錆兎と共に最初に対峙した時と微妙に違う。
髪は伸びて白髪になっていた。
まあ村田は前世でこの姿も見たことがあるので戸惑いもなかったのだが…。
──あれが…無惨……
と皆がまず次の行動を悩む中、
──死ねやあぁあ~!!!
と、真っ先に飛び出していったのは不死川だ。
当然攻防を兼ねてその不死川に伸びる無惨の触手。
うあああぁ~~!!と村田は焦って凪を使って不死川を守りながら、
──あの触手で傷を負うと致命毒を食らうからねっ!
と、周りに注意を促す。
しかしながらその不死川の行動で標的がそちらに向いたのだろう。
半分吸収されかけていた珠世が繭から放り出されて、そちらは愈史郎が駆け寄って受け止めている。
とりあえずこれで救わねばと思っていたあたりは全員取り戻した。
未だ合流してこない煉獄と炭治郎達のことは気になるが、無事輝利哉様と合流して避難先の水柱屋敷で指揮を執っていらっしゃるお館様から死亡の通知が来ないと言うことは、まだ無事は無事なのだろう。
ということで目の前の無惨に集中だ。
全員揃って鬼のいない世界を見るのだ…という目標はまだ折られてはいない。
今度こそ…今度こそっ!…と村田はそう思いながら刀を握り直した。
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