──俺じゃ攻撃しても戦力外だし可能な限り攻撃防ぐ側に回るねっ
と、まずそう宣言して村田は各々の役割確認を暗に促す。
一般隊士だったその頃よりは柱にまで昇りつめたことで自分の強さが変わっているということもあるが、それはおそらく誤差の範囲だ。
むしろ無惨の強さの違いは、今生は前世よりもかなり…それこそ半分以下ほどの時間でここまでたどり着いているので、珠世が無惨に仕込んだ薬の成分がまだ分解されずに効いているためだと思う。
前世と同じく白髪になっているのは人間に戻す薬と老化の薬の効力だが、前世と違ってその二つが完全に分解されていない。
それがさきほど無惨に斬りかかった不死川の攻撃の余波でわずかに薄皮一枚だが負った無惨の傷が消える速度が非常にゆっくりなことで見て取れる。
前世ならかなりの刀傷でも一瞬で再生していた。
そう、首ですら斬られても再生していたのだ。
なので前世では無惨を外に引きずり出してとにかく逃がさないように夜明けを待つしかなかったのだが、今のまだ人間に戻す薬が効いている無惨なら、首を落とすことで倒せるのではないだろうか。
──二重に手を打とう。首を斬る班と壁や天井を壊して外の光の下にさらす班。
──あ~…首を落としても死なねえ可能性もありってか。じゃ、俺は前者の攪乱役で。
と、それで宇髄が即理解して反応してくれる。
──じゃあ俺と甘露寺は後者を受け持とう。終わったら前者に加わるということで。
と、続いて伊黒がそう言って甘露寺と顔を見合わせて頷いた。
──じゃああとは前者ね。私もサラサラさんには敵わないけど出来る限り防御を受け持つわ。攻撃の要は悲鳴嶼さんと不死川君になるでしょうし。
と、カナエが最後にそう締める。
そうしてさあ各々の分担に…と動きかけて、ふと感じる視線。
それに村田が少しだけ立ち止まって
「珠世さん、ありがとう。
あなたのおかげでここまで来られました。
あとは俺達が頑張る番だから少し休んでて」
と笑みを浮かべて言った。
それにさすがの鬼でもすぐには回復できないくらい弱ったその体を支えている愈史郎が
「そうですよ。珠世様はここまでで一番の功労者です。もう休みましょう」
とおそらくそれでも参戦を表明していたのであろう珠世にややホッとしたような面持ちで言う。
「…それでも…愈史郎だけでも…」
と、まだどこか辛そうに言う珠世。
しかし愈史郎は珠世が心配で離れたくはないのだろうということは見て取れる。
それを押してまで来てもらって戦況が劇的に変わるのか…?
いや、どちらにしても勝てるかわからないわけなのだから、ここまで頑張ってくれた二人には出来得る限り報いたいし、無理はさせたくはない。
その権限は自分にはないけど…と思いながらも村田は
「気持ちはとてもありがたいけど、今はまだ柱が全員集合しているわけじゃなくて、煉獄も錆兎もそれぞれ離れたところで戦っているから…。
それを誘導するためにも愈史郎の能力が必要だし、彼には安全なところに居て欲しいんです。
頑張るから…。
無惨は絶対に倒せるように俺達が頑張るから、信じて見守っていてください」
と、愈史郎がそこに待機する理由付けをしてそう笑みを浮かべた。
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