村田の人生やり直し中_101_無惨戦2

薬の分解が終わっていないから弱っている…確かにそうかもしれない。
しかしそれは首を刎ねれば倒せる…その程度のもので、攻撃の苛烈さには影響していない気がする。


珠世を愈史郎に託して戦いの場に戻った村田。

すでに甘露寺と伊黒以外の柱4人と玄弥とカナヲは無惨との戦闘に入っていたが、絶賛苦戦中だ。
弱ってもなお6人がかりで倒せる気配がしない。

「サラサラさんっ!私も攻撃に入るから凪お願いっ!!」
と、いつもはおっとりとしたカナエが厳しい声でそう言って、カナヲと共に不死川や悲鳴嶼と反対側に回る形で無惨に向かって行く。

致死毒を食らうから攻撃を受けないように…と言ってもとてもじゃないが全てかわし切れるわけもなく、皆それなりに致命傷にならない程度に傷を負ってはいるが、そこは珠世が用意した解毒剤でなんとかなるようだ。

だがそれは飽くまで毒に対してだけであって、致命傷を負えば最後なのは変わらない。


凪っ…凪っ…凪っっ!!!

全てを吸収できないものの、これで致命傷を避けなければ攻撃に転じることすらできない。
日々鍛えているはずだったのだが、凪を連発しているうちに村田の手もプルプルと震え始めた。

なにしろ全員分の防御を一手に引き受けているのだから、当然と言えば当然だろう。

最初に脱落したのは初っ端から全力で攻撃を仕掛けていた不死川だ。
無惨の攻撃で吹き飛ばされて壁に激突したままそのショックと失血で意識を失う。
玄弥はそれを守って撤退。
無惨から少し距離を取り、次に優れすぎている視覚を使い過ぎたカナヲがカナエの指示で玄弥たちのところまで一旦退避した。

強い…弱っているはずなのになんでこんなに強いんだ…
村田は絶望的な気持ちになった。

前世ではなんとか夜明けに持ち込んだが、今回は早くたどり着いてしまっただけに夜明けまで引き留めておくのは難しい。
なんとか首を斬らないとこちらが持たない。

そう考えると早くたどり着いたのは失敗だったのか?
ここまで来て…ここまで来て、今までの努力が全て水泡に帰すのか?
やり直して順調だったはずの人生がとんでもない失敗に終わってしまうのかっ?!


そうして不安と絶望に苛まれながらももうほとんど機械的に凪を連打していた村田だが、そこに無惨の触手が伸びてきた。

すると
──やらせないっ!!
と、自分の防御がお留守だった村田の前にカナエが飛び込んできて、それを受ける。

それで間一髪で触手は防いだものの、たなびくカナエの綺麗な長い黒髪が斬られて宙を舞って散った。

ああ…綺麗な髪だったのに…女の子の大切な髪なのに……
と、村田はそれに思わず涙をこぼした。
代わりに自分が禿げれば良かった…と集中が途切れていた自分を思い切り恥じる。

やっぱ強いなぁ…みんな。
俺と違って強いよ…
錆兎の巻き込まれで水柱になんてなったけど、しょせん俺は一般隊士なんだよ…
と、女の子に守られてあまつさえ髪まで失わせたことにひどく心が揺れて折れかける。

──さらさらさんは皆を守っているからっ…そのさらさらさんの事は私が守るわっ!!

普段はたおやかでもカナエは戦いにおいては立派な柱だ。
自分と違って立派な柱なんだ…

こんな状況でも折れない強い心に情けないことにますます涙が止まらない。

ごめん…弱くてごめんね…と心の中で謝罪する村田にまた、容赦なく触手が襲い掛かる。

凪で防げるかっ?!
自分がダメでもせめてカナエだけでもこの一撃は…っ!

そう思って村田は気力を奮い立たせて最後になるかもしれない凪を放つため痛む手で刀を握り直した。








2 件のコメント :

  1. 誤用報告です。「水泡に化す」→「水泡に帰す」の誤りかと思いますのでご確認ください。佳境ですねぇ、錆義の出番は何時頃かな(;´Д`)

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    1. ご指摘ありがとうございます。修正しました😀
      錆兎は…次ですねっ😁

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