(ごめんね、皆…。俺はここまでだ…)
そう思いながら、村田は大きく息を吸って渾身の力で
──水の呼吸 拾壱ノ型…凪っ!!
と、刀を振るった。
カナエに対する攻撃が少しでも軽減されればいいな…と思って放ったその一撃は、なんと後ろから同じ言葉を添えて放たれた同じ技により増強されて、カナエだけではなく村田に対する攻撃も霧散させた。
…え…??
驚いて振り向いた村田の目に移ったのは、キラキラと光る刀を持った本来主人公であるべき友人の姿。
その後ろには煉獄と炭治郎達もいる。
──俺が来るまでよく耐えてくれた。さすが村田だっ
と笑う錆兎。
だが彼とて無傷ではない。
元々傷が残る右側ではなく、今度は左側の目元をざっくりやられているようで、止血をしているらしき包帯に血がにじんでいる。
──…錆兎…黒死牟は…?
──…ああ、辛勝というところだなっ!
──…その…目が?
──…大丈夫っ!俺は気配で察知する人間だからたとえ両目が見えなくても戦うのに支障はないぞ。
──…でも…目がっ……
──…片目が残ったから義勇が産んでくれる子を見ることが出来て幸運だったなっ!
村田は号泣した。
前世で4人がかりで…しかも柱一人を含む二人の犠牲を出して倒した上弦の壱の元に一人置いてくると言うことは、こういうことだった。
五体満足で超えられるわけがない。
命があっただけでも儲けものだ。
それでもそうして拾った命なのに…もう戦線離脱しても仕方がないと皆が納得してくれるであろう状況なのに、この親友は村田を助けるために駆け付けてくれたのである。
──さあっ、泣いている暇はない。村田、もう一度だけ凪を放てるか?
と、そんな状況なのにそう言う錆兎に村田が否と言えるはずがない。
──イケる…まだまだ全然イケるよ…
手はとっくにボロボロで、刀の柄は擦りむけた手の平から出た血で滲んでいる。
それでも村田はそう言って刀を構え直した。
──さすが村田っ!俺の親友だっ!
と、村田なんかより遥かに重傷だろうに、錆兎は全然元気にそう言って晴れやかに笑う。
──それでは…俺と竈門少年、嘴平少年、我妻少年は陽動だなっ!
──はいっ!絶対にお役に立ってみせますっ!!
──お~!俺にかかればあんなうねうねチョロいもんだぜっ!!
──…邪魔にならない程度にちょっかいかけたら…逃げ回るから…
と、後ろの一同がそう言って、やはり刀を構え直した。
錆兎ほどの重傷ではないにしても彼らだってやはり無傷ではない。
それでもほんの少しのためらいさえ見せる奴は皆無だった。
彼らの目は常に勝利…光ある未来へと向いている。
「では4人先に行って無惨の注意を引き付けてくれっ!
それでこちらから注意が反れたら村田は凪を頼むっ!
獅子爆流で触手を全て粉砕したら、再生する前に一気に片をつけるつもりだ。
正真正銘、奥義を使うのはこれが最後だ。
自分で言うのもなんだが、綱が鬼狩りのために編み出した剣技だ。
一見の価値があると思うぞ。
村田も凪を撃ったらゆっくり見物していてくれっ」
負けることなど微塵も考えていない、そんな言葉と共に最初の任務の時から苦楽を共にしてきた鮮やかな青い刀身からキラキラと光が舞う不思議な日輪刀をしっかりと握り直す錆兎。
ああ…勝つんだろう。
目の前の親友は確かにもうボロボロなのに、この戦いは確かに勝てるんだ…と、そんな希望を感じさせてくれる煌びやかさと力強さがそこにあった。
──…行くぞっ、村田っ!!
──了解っ!!
錆兎の刀から立ち上る青い獅子の形をしたオーラを村田の静かな水面が包み込む。
──…水の呼吸 拾弐ノ型…獅子爆流っ!!
──水の呼吸 拾壱ノ型、凪っ!!
二人の掛け声が重なった時、無惨戦の最後の攻撃が始まったのだった。
錆兎、目が〜って義勇ちゃんが号泣しそうですね。あとすこし、頑張って!
返信削除そのあたり、義は錆兎はそこに存在するだけで尊い人なので、むしろ村田の方がショック受けてます😅
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