思いもかけず上弦の参と弐がほぼ同時に片が付き、上弦の壱は錆兎を置いてきたことで戦闘時間ゼロで抜けたので、前世よりも随分と早く展開が進んでいる。
その結果が引き起こした奇跡として、珠世がまだ生存していた。
と、愈史郎がいつのまにか無惨の元へとひた走る一行の隣を走りながら叫んでいる。
──お前なぁ…目的は打倒無惨であって、誰かさんの救出じゃねえからな?
──俺らだって断腸の思いでダチ置いてきて頑張ってんのにその言い方は何だァ?!
と、まず反応する宇髄と不死川。
なるほど。
今回不死川がすごく不機嫌だったのは、錆兎一人に黒死牟の相手を押し付けるような状況だったからなのか…。
そのあたりそれでさっさと先に進めるならと割り切れないあたりが、実はとても情に厚い不死川らしい。
しかしまあ…愈史郎の珠世への思いは伊黒の甘露寺へのそれに匹敵する。
一応彼の能力で無惨の場所の特定他、必要な情報を得ているのもあるし、ここで喧嘩しても意味がない。
だから村田は間に入ることにした。
「うん。早く無惨の元にたどり着いたら珠世さんも救えるし、無惨が薬を無効化する前に弱っている状態で倒せるかもしれない。
早く倒せたらそれだけ錆兎も早く解放されるしね。
良いことづくめだね。
頑張ろうっ!」
と、とりあえず皆目指すところは打倒無惨で利害は一致しているのだと主張してみれば、胡蝶カナエが
「さすがサラサラさん。
錆兎さんがね、いつも冷静で穏やかですごい奴なんだって言ってたのがわかるわぁ」
などと言いつつフフっと笑う。
それに甘露寺までが
「そうよねっ!珠世さんも錆兎さんも皆含めて生存出来たら完全試合よねっ!」
と拳を握り締めて明るく言えば、甘露寺はいつでもなんでも正しいと言う伊黒が当然のように
「さすが甘露寺だ。
そうだな。目指すなら完全試合だな」
と、相槌を打った。
こうして流れは自然と穏やかな方へ。
そんなみんなの前を行くのは鎹烏達。
──ガンバレ、急げっ!カア、カア、カア!
と声援を送りながら皆を誘導するため飛んでいる。
途中、道を阻むように鬼達がゾロゾロと現れたりもしたが、上弦はもういない。
それ以下の鬼など、柱の集団の敵ではない。
足止めにもならずあっという間に斬り捨てられた。
急げ、急げ、もうすぐだっ!!
全員が心の内で、あるいは口に出してそう唱える。
そしてどのくらい進んだのだろうか…前方に不気味な肉色の大きな塊が見えてきた。
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