村田の人生やり直し中_95_猗窩座の死

──やったっ!!!

童磨が首を刎ねられてサラサラと砂状になって消えたのを目撃して、村田は心底ホッとした。

これで先ほどまでないとは思ってはいたが万が一にも上弦弐と参に共闘されるかもしれない可能性が皆無になったし、何より前世と違って倒すために自らの身を毒の塊と化した状態の胡蝶しのぶがいない状態で絶対に倒せるという保証がなかった童磨を無事倒すことができた。

しかも…前世と違い、一人の犠牲もなしに、である。
これは快挙だ。素晴らしいっ!

そんな風に自分たちの現状に安堵はしながらも、ふと気づく。
犠牲もなしに…?
いや、こちらに童磨が来たということは、童磨担当の柱達は……

もしかして前世よりもかえって犠牲が多かったのか?
村田が口出したせいか?
いやいや…自らを毒の身体と化した胡蝶しのぶという要素が消えている時点で、どちらにしろ前世と同様というわけにはいかなかった。
となると犠牲を出すだけ出して倒せない可能性もあったわけだし…

今後についてはまあ少なくとも宇髄はこの戦いに参戦していなかったので戦局には影響しないとして、甘露寺と伊黒が参戦出来ない状態での無惨戦はどうなるんだ?

それに感情的にも…最終戦で亡くなった彼らの命も救って添い遂げさせてやりたい…そんな気持ちもあって頑張ってきたのだが…やはり犠牲は仕方ないものなのか…。

色々がくるくる回って青ざめていく村田。
だが、そんな村田と違い、共闘して童磨を退けた二人は元気そのものだ。

「「よしっ!やるぞっ!!!」」
と二人ともすっきりした顔で声を揃えてそう言うと、再度戦うべく身構える。

その掛け声に、村田はそれでも今成すべきことに戻らねば…と涙を拭いた。
しかしながら優しき脳筋達は

「「村田、どうしたんだ?大丈夫か??」」
とこちらも声を揃えていったん構えを解いて村田を心配してくれる。

もう、なんなんだろうか…
錆兎はとにかくとして、猗窩座まで優しすぎだろう。

この時点で村田は錆兎はもちろんだが猗窩座に対しても極力命までは取らないと言うルールを提案して良かったと思った。

胡蝶カナエの言葉、『鬼とも仲良く』と言うのは絶対に不可能だと思っていたが、目の前の脳筋二人を見ていると、可能な気がしてくる。

人間にだって良い奴悪い奴がいて、関係が良かったり悪かったりするのだから、鬼だって色々な鬼が居て、色々な関係があってもおかしくはない。

「…ごめんな。大丈夫…。
少しな、お前達を見てカナエちゃんの言葉を思い出したな…」
と村田がズズっと鼻をすすって言うと、錆兎は思い当ったのか、ああ!と頷いてそれを猗窩座に説明している。

すると猗窩座も
「確かに俺も同じ種族であるあのクソよりは錆兎の方がよほど好ましいと思うぞ」
と、なるほどと言うように頷いた。

「ごめんな?本当に大丈夫だから。
せっかくだ。次に他が来ないうちに始めようか」
と、村田が気を取り直して言うと、二人も
「「そうだな!」」
と頷いて再度構え直した。


こうして、もしかしたら犠牲になっているかもしれない柱達への思いや彼らが居ないことによるこの後の戦いに対する不安などをなんとか押し込めて、村田が立会人としての役目に戻ろうとした時だった。

いきなり猗窩座の身体がはじけ飛ぶ。

え???
まだ錆兎も猗窩座も全く攻撃を仕掛けてはいない。
その場に居る3人全員が唖然とした。

だがコロンと地面に転がった頭だけの猗窩座が、なるほど…と何か思い当ったような表情をする。

「猗窩座っ!どういうことだっ?!!」
と、駆け寄って恐れることもなくその首を手に取る錆兎に、猗窩座は
「…ああ…無惨様に寝返り行為とみなされたようだな……。
…正々堂々と勝利を勝ち取ろうとしただけで、そういうわけではないのに……。
…すまん…貴様との勝負は…来世にでも……絶対に…」
と、笑いかけると、錆兎の手の中でサラサラと砂となって指の間からすり抜けて消えていった。

声も出せずに呆然と先ほどまで好敵手の首を抱えていた自分の両の手を凝視する錆兎。

あまりにあっけない猗窩座の死に村田も咄嗟に言葉が出ない。

そうして二人してどのくらい放心していただろうか…。
その空気を変えたのは、
──お前ら、無事かっ?!
と部屋に駆け込んできた宇髄の第一声だった。









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