村田の人生やり直し中_93_楽しい打ち合い

こうしてまるで何か好敵手同士の試合のような清々しさで始まる戦い。

立会人に徹する村田は戦いの余波を受けないように距離を取った。
それはすなわち自分の身の安全を確保するということと共に、錆兎が不利になっても介入しないと言うことを意味する。

猗窩座は強者と戦うのが好きだと前回も言っていて、今回彼が認めるところの強者である錆兎と思う存分戦えることが嬉しくて仕方がないという顔をしているが、実のところ、錆兎の方もまるで獲物を前にした肉食獣のような、どこか高揚したような表情を浮かべていた。

色々としがらみを抱えているため抑えてはいるが、実は彼もまた、思う存分刀を振るうのが楽しいのだろう。
前世での義勇が強かったが最後まで刀を持つことは好きではなかったのとは対照的である。

そんな風に互いにあまりに楽し気な顔をしているので、なんだか本来憎むべき敵同士の殺し合いには見えない。

技に関しては錆兎の側は凪がない時点で防御を捨てた獅子爆流は使えない。
かといって、通常は上弦一体倒すのに最低柱が3人欲しいと言われているくらいなのだ。
いくら練度がとてつもなく高いとはいえすでに手の内が見えている水の呼吸の型では一人で倒すには上弦の参の鬼は強すぎる。

これはもう温存して手の内を隠す余裕はないだろうな…と思っていると案の定で、錆兎は初っ端に頼光四天王筆頭家系に伝わる技、朱雀を繰り出してきた。

高い風切り音を響かせて、赤々と燃える火の鳥が猗窩座を襲う。
さすがの上弦もいきなり繰り出されたその技の速さに完全には反応しきれなかったようだ。
猗窩座の髪がチリリと焦げ、左耳が斬り落とされた。

まあ猗窩座は鬼なので首を落とされない限りは耳どころか腕の一本も落とされても再生する。

そしていきなりその首に近い場所を攻撃されても焦る様子はなく、むしろ
──素晴らしいっ!!なんという剣技!!待った甲斐があったぞっ!!!
と、キラキラした目で錆兎の技を大絶賛した。

一方の錆兎も秘伝の技を避けられてもやはり焦った様子もなく、
──あ~速さには自信のある型だったんだが、これでも避けられるか…
と普通に苦笑する。

その後も何故か使用するのは水の呼吸の型と朱雀まで。
以前錆兎は実家では炎風水土光の型を使っていると言っていた。

ということは、朱雀がおそらく炎なのだろうから、あとの風水土光の技というのもあるんじゃないだろうか…。
あるなら使わないのか?…と思いはするが、上弦の壱用に温存しているのであればここで口にしてはダメだろうと村田も自重して口をつぐんでいる。

猗窩座はもちろん錆兎も実に楽しそうに刀を振るっているのでもう突っ込みはなしとするが、しかし、上弦の参相手に技を温存して勝つ余裕なんてあるのだろうか…。

見ている感じでは今のところは互角に見えるが、戦いが長引けば体力に限りがある人間である錆兎の方が不利な気がする。

大丈夫か?これ…。
と、現状緊張感はなく…しかし先々を考えるとややハラハラと不安な思いも抱えて二人の強者の戦いをのんびり眺めていた村田。

しかししばらくして背後で何か冷やりとした空気を感じて慌てて刀を手に取った。








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