凪を習っておいて良かった…と村田は思う。
初っ端、無惨が姿を現した時点で錆兎から各柱に連絡が行き、皆が産屋敷邸を目指し急いでいた。
だがそれにも当然限界はきた。
時間稼ぎをされていると気づく無惨。
そこで攻撃に転化しようとするところに錆兎が介入。
村田はお館様と奥方様、それに上のお嬢様二人を先に避難を終えている輝利哉様と下のお嬢様二人の元へと送り届けるべく、急いで避難をさせた。
それにはそこそこ時間がかかるかと思ったが、なんと村田が4人を連れて産屋敷邸を出ようとした時には、もうすでに…というか、隠よりも早く単身で元水柱の鱗滝左近次が駆けつけていた。
…え?なんで?と驚く村田だが、この錆兎の師範は錆兎が気配で広範囲の状況を悟るのと同じく、匂いで色々を察知できるらしい。
──ここはワシが引き受けた。隠もじきに来るから弟子を頼む。
とお館様達ご家族を引き取って、夜の闇の中へと消えていく。
すげえな、鱗滝組…と、錆兎や炭治郎だけでなく師範にもある特殊能力に感心しながら、村田は慌てて今出てきたばかりの館へ戻った。
そうして中庭に戻ると、さすがにきつそうな錆兎に
「獅子爆流使う?それなら俺が凪で防御引き受けるけど」
と後ろから声をかけると、防戦一方で無惨の気をそらすまでのことは出来ないままいた錆兎は
「あ~~~ありがたいっ!!」
と心底ほっとした声が返ってくる。
目眩ましという意味ではあれが一番だと思うが、防御が皆無なので凪なしでは瞬時に死ぬそれを使いたくて使えなかったのだろう。
──じゃ、そういうことで行くぞっ!
と声をかけて、自身が編み出した水の呼吸の最終奥義、獅子爆流の青い獅子と水飛沫で、ほんの一瞬だが無惨の注意をそらした。
そして鬼の身体能力を持つ珠世が役目を果たすには、その一瞬で十分だったのである。
それからは続々と他の柱も駆け付けてきて、しかし全員で無限城に飛ばされる。
各上弦のいる場所は前世を参考に全員が把握。
愈史郎の能力を借りた輝利哉様の誘導でそれぞれ己の担当する場所へと急いだ。
村田も錆兎と共に下弦程度の力をつけた鬼達をなぎ倒しながら一路上弦の参、猗窩座の元へ。
幸いに…というべきなのだろうか。
錆兎と戦うのをとてもとても楽しみにしていたらしい猗窩座は準備万端どころか、自分の所にたどり着くのに邪魔だと言うことで、人払いならぬ鬼払いをして錆兎を待ちかねていた。
なので無惨を引き付けている間はかなり消耗したものの、その後は全く戦うことなく、むしろ二人して元気いっぱいに猗窩座の元へとたどり着いたのである。
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