村田の人生やり直し中_88_水柱として…

こうして決戦時の各々の行動についての計画は経て、相手側の城で飛ばされる時も一緒に飛ばされるように共に戦う相手の傍に極力居るということを確認後、最後になるかもしれない柱合会議は解散した。

その後はそれぞれ一緒に戦うことになるあたりと集まってわかっている上弦の能力を考えた戦い方の打ち合わせなどに入る面々も居たが、村田の場合は上弦の参と戦う錆兎に同行はしても戦いには絶対に加わらないという前提なので、打ち合わせも何もない。

そうなると自分には何が出来るのだろうか…。

少なくとも錆兎が勝っても負けても村田は最終的に上弦の壱戦に合流だ。
だから全く戦わないというわけでもないのだが、相手を倒すということにかけては自分よりも遥かに特化して優れた悲鳴嶼や不死川、そして無一郎が揃っているので、自分が戦いの中心になることはない。

となると水柱という自分の特性を生かして出来ることは…と考えた時に、村田は一つの考えにたどり着いた。

そしてそのまま足を花柱屋敷に向ける。


そう、そこには前世の水柱が身重のためお預かりとなっていた。

そういえば彼…いや、現在女性になっているので彼女と言った方が良いのだろうか、とにかくその冨岡義勇が女性になってしまった血鬼術をかけた鬼を追っていたはずの不死川が柱合会議に出ていたということは、その鬼を倒して彼女を元に戻すのをいったん諦めたとみるのが正しいのだろう。

村田なんかがその立場になったらパニックを起こす気がするが、義勇は意外に女性生活を楽しんでいるように見える。
…というか、堂々と錆兎と連れ合いとして振る舞い子を産めるということで、むしろ幸せそうに過ごしていた。

元々年の離れた姉に可愛がられて育った弟で女性の文化に抵抗がない彼女にとっては、自身の性別よりいかに錆兎と共に居られるか、近い距離で生きていけるかの方が大切らしい。

ということで、男に対してそれは…と思いつつも、村田は花と菓子を手に彼女を訪ねて行った。


「あ~、村田。
今日は臨時の柱合会議と聞いていたが錆兎は一緒じゃないのか?」

怪我人たちの治療施設がある西側の建物と中央の建物を挟んで反対側。
勤務する少女達が暮らしている東側の建物に顔を出すと、縁側に座って洗濯物を畳んでいた義勇が顔をあげて、村田に向かって手を振った。

「うん。錆兎は俺と違って全体を見ないといけないから忙しいしね。
あ、これお土産ね。良かったらみんなと食べて」
と、錆兎が一緒ではないことを知って少しがっかりした様子を見せる義勇に、村田は花と共に手土産のカステラの箱を手渡す。

「あっ!カステラだっ!!」
と、そのとたん顔を輝かせる義勇。

かなり高級で庶民の口にはあまり入らないその菓子。

まあ柱と同等かそれ以上に給与をもらっている錆兎なら全く問題なく買えるだろうが今は花柱屋敷に世話になっている身なのでなかなか食べられないようだ。
義勇の機嫌が一気に上昇する。

それに村田はホッとした。

そう、今日村田が義勇を訪ねたのにはわけがある。
前世で水柱をやっていた時に使っていて、今生、水柱どころか一般隊士としてもさして階級が上がらない程度にしか戦っていなくても彼女のみが使えるその技、凪。
それを伝授してもらえないかと頼みに来たのだ。

ずっと伝わっていて自身も育て手から教わった大勢が使える技ならとにかく、自身が編み出して自分しか使えないという大切で希少な技を早々他人に教えたくはないだろう。

そうは思うのだが、明らかに他と比べて攻撃に劣る自分が上弦戦で貢献するには、やはり水柱らしく防御に特化…それも自身だけではなく周りに対する防御も請け負えるだけの何かが欲しいのである。


なので嫌がられるとは思うが背に腹は代えられない。

──あのさ、頼みがあるんだけど…
と、おそるおそる切り出したのだが、義勇は目をぱちくりとさせて
──うん?いいけど?
と、本当に何でもないことのように頷いた。

──え?ええっ?!本当に良いのっ?!!

あまりにあっけなく了承されたので村田の方が驚いてしまってそう聞き返すと、義勇は
──うん。なんでダメなんだ?
と小首をかしげる。

そして続く言葉は
「村田はたぶん上弦戦とかに突入することになったら錆兎と組むんだろうし、俺は子を抱えてるから戦場に行けないしな。
むしろ俺の代わりに錆兎を守ってくれればありがたい。
俺も今は大切な錆兎の子を無事に産まねばならないし……他の奴にその役割を譲るのは絶対に嫌だけど、一時的にでもどうしても代わりを立てねばならないなら村田がいい」
で、錆兎だけではなく義勇にもそこまで信頼してもらっていると思えば、胸が熱くなった。

こうして一応錆兎にも事情を話して花柱屋敷に通うことになった村田。
そこで義勇に凪を教わりながら、いつ来るかもしれない最終決戦を待ち続けた。









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