村田の人生やり直し中_83_柱稽古を終えた水柱屋敷にて…

柱稽古を始めてだいぶ経った頃…。

水柱である村田の稽古は最初の宇髄の基礎体力向上の訓練に続いて二番目に受けるものなので、昨日にとうとう最後の突破者が去って今日は朝から設置した罠の後片付けに入っていた。

設置の時に手伝ってくれた錆兎は、回収の時にもやはり手伝いにきてくれる。

そうして二人で午前中に片付けて、あとは午後にしようと二人揃って切り株に腰かけながら錆兎が持ってきてくれたおにぎりを昼食に食った。

やけにいびつと言うか、いつも錆兎が作るきっちりと綺麗な三角のおにぎりとは違う、まとめて握るだけは握りましたという感じの丸いそれは、なんと義勇が作った物らしい。

──腹に子を抱えていて大変なんだから無理をするなと言ったんだけどな。
と言いつつ、少し嬉しそうにそれを頬張る錆兎。

実際、腹に子がいない頃からこの二人に関しては飯を作るのは錆兎の方だったが、最近では『錆兎にも錆兎の子にも自分が作った物を食わしてやりたいから』と、義勇が花屋敷の面々に料理を教わっているらしい。

今更感がなきにしもあらずと思わないでもないのだが、錆兎に言わせると、たとえいびつな形のおにぎりだろうと、ゴリゴリと生煮えの野菜の煮物だろうと、義勇が自分のために一生懸命作ってくれた物なのだから何より美味いのだそうだ。

まあわかる気はする。
村田だって初恋のあの子が生きていれば、多少料理の腕がアレだろうと、村田のためにと心を込めて作ってくれた物ならありがたく頂いて、世界で一番美味い飯だと言ってやるだろう。

互いに鬼に大切な者を全て奪われて育て手に拾われた二人がこうして幸せを手に入れていることはめでたいことだ、と、村田は心からそう思った。

これもやり直した人生のおかげだなと村田も嬉しさと共にいびつな上にかじればポロポロと崩れてきて若干食いにくいおにぎりを噛みしめる。

何故かやり直すことになった二度目の人生のおかげで、本当なら13で死んでいたこの気のいい親友とそれにより感情を失ってしまった不器用だが優しい友人の間に子が産まれ、彼らは新しい家庭を手にすることができるのだ。

人生をやり直してからの自分は我ながらいい仕事をした。
全くもっていい仕事をしたものだ。
…と、誰にも言うことは出来ず自分しか知らない事ではあるが、村田は心の中で思い切り自画自賛をしてみる。

「…子ども…どっちに似ても美形だよな」
「…そうか?義勇は確かに美形だが、俺は傷が目立つばかりの普通の顔だぞ?」
「…お前ねぇ…それで普通の顔とか、本当に平々凡々な顔の俺に土下座して謝れ」
などと和やかに話しながら昼食を終え、そろそろ午後の片付けに入ろうか、と、二人で立ち上がった時だった。

錆兎と村田のそれぞれの鎹烏が揃ってやってきては頭上でクルクルと回りながら悲報を告げてきたのだった。








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