錆兎に手伝って罠が完成して数日後…音柱による最初の稽古、基礎体力向上稽古が始まっていた。
最初の稽古自体がかなり厳しいものなので、どのくらいの隊士がそれを超えてくるのか…ここまで来た隊士の数はある意味稽古全体を制覇できる隊士の目安となるだろう。
宇髄の稽古が始まって5日ほど経った頃、最初の突破者である栗花落カナヲが単身でやってきた。
(…女の子一人かぁ……)
と村田はそれに少し困惑する。
ここでの稽古は裏山の罠を時間内に突破するというものだが、柱の村田ですら初日は痣だらけになるだけで最後まで突破できなかった。
ようやく半分ほど超えたところで時間切れ。
これを13歳以下で錆兎はとにかく、義勇まで普通に超えていたというのだから、鱗滝一家が強いのは納得できてしまう。
むしろこれを普通に超えて身の丈よりも大きな岩を斬れて初めて最終選別に臨めるという鱗滝の弟子たちは全員とてつもなく強かったはずだ。
それが揃って最終選別を超えられなかったのは、あの手鬼が物理的に強いというのもあったが、なにより錆兎もそうだったが煽りで冷静さを失ってしまったからだろう。
と、二度目の人生としてもだいぶ昔になってしまった最終選別の様子を思い出す。
まあそれはともあれ、作った罠に挑戦してみた村田よりも、稽古に来た隊士達は大変である。
なにしろ設置されている罠とは別に、ところどころで村田と錆兎が直接妨害をするのだ。
いや、この罠だけでもそんな風に大変だし、さらに自分が妨害役に回るということで、村田はさすがに錆兎までは必要ないと言ったのだが、錆兎曰く、これから無惨の本拠地で上弦壱、弐、参と対峙することになるのだから、少しでも強くなって少しでも生存率をあげるべきだということで、押し切られてしまった。
…まあ、錆兎もかなり暇なんだと思う。
何故かはわからないが、上弦の肆と伍を倒した刀鍛冶の里の任務以来、鬼の出現率がすごく減った。
出たとしても本当に一般隊士でも十分倒せてしまうくらいの強さで、柱以上の出番がない。
そして…あの刀鍛冶の里の任務のあと、事後処理と言うことで錆兎は義勇と共に1週間ほどあの場に残り、村田達はみな戻ってきたのだが、それからさらに2か月ほど経った頃…義勇が花柱屋敷に引き取られていた。
それを聞いた時、村田はとても驚いて錆兎の家に駆け付けたのだが、そこでさらに驚くべきことを聞かされる。
「あ~…なんというか…おそらくあと2か月ほどはあちらにいるんじゃないかと思う。
…いわゆるつわりというやつだ。
俺が居る時は良いが仕事で家に居られない時も多いから、医療所の方が安心だろう?」
うわぁぁ~~!!
と思わず叫んだ。
いやいや、まあ今は女になっているから有りと言えば有りかもしれないが、それっていきなり男に戻ったらどうなるんだ?とさらに心配に思ったわけなのだが、さすがに言えない。
言えないのだが、そこは察しの良い錆兎は苦笑交じりに
「以前、上弦の参に子を授けられる鬼がいると言われただろう?
刀鍛冶の里に居る時に俺の居場所も当然知られていてな。
その鬼を派遣されたんだ。
いわく相手が男だろうとすることをすれば子ができるようにできるということで、万が一義勇が男に戻っても腹に居る子は問題ないと言われて、もうない機会かもしれないしと子を作ることにした」
と教えてくれた。
なるほど、ならめでたい。
錆兎の子なら強い剣士になるだろう。
と、素直に祝いを口にする村田に、さらに錆兎が言うには
「ただ…義勇が居ない家に戻るのはやや寂しいというか…あと、暇でな。
最近鬼も少ないし、輝利哉様もお館様の具合があまりよろしくないから、家族皆で過ごすことがおおくて、手持無沙汰なんだ。
だから村田も柱稽古に参加するということなら俺も手伝うぞ」
ということで、罠の制作から実際の妨害役まで参加してくれることになったのである。
ここで訓練を積む隊士達にとっては難易度が格段にあがっていいのかわるいのかよくわからないところではあるが…
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