村田の人生やり直し中_78_上弦伍の痴漢疑惑?!

女性陣の後方に視線を向ければ、何故か着替えがモソモソと動いている。
それに慌てて刀を手に男性陣が走り寄る前に、音もなく現れたもう一人の少年が

「あ~あ、遅れてきたらお風呂に入り損ねちゃったじゃないか。
…ていうか、女性の服を被るって……変態?」
と、トスっと服に刀を突きさした。

すると服がモゾモゾっと動いたあと、ぱぁっと宙を舞って、
「失礼なぁあぁ~~!!!
人間の分際で生意気なことをっ!!」
と、下半身が壺に入った不気味な鬼が顔を覗かせた。

「…上半身裸で壺に入ってるって時点で…変態くさいよ」
と、口調は淡々としながらも鋭く刀を振るう無一郎。

それに炭治郎が
「義勇さんの服を被るなんて……っ!!
万死に当たる変態だっ!!」
と追い打ちをかけながら斬りかかる。

そんな二人に
──私は変態じゃなあぁぁい!!!
と叫ぶ鬼と、
「「嘘だ、へんた~い!」」
と言いながら刀を振りまわす少年二人を大人3人組は眺めていた。

「…どうするよ?あれ、放っておいていいの?錆兎」
と言う村田に、
「…う~ん…まあ、いいんじゃないか?
炭治郎はとにかくとして、無一郎も柱だしな。
危なくなったら介入するが、何事も経験だろう」
と、すっかり観戦モードになった錆兎は近くの岩にどっかり腰をおろし始める。

「では俺は鬼が着替え中の甘露寺達の方に行かないよう、念のためあちらで見張っておこう」
「ああ、そうだな。頼む」
と、伊黒とはそんなやり取り。

前世では無一郎に痣が発現する要因になった上弦の肆戦だが、遭遇する時期がわかっていて準備万端で対峙すると、こんなに違うものなのか…と、村田は感心してしまう。

もちろん無一郎達も子どものような言葉での罵り合いをしていても別に戦いに余裕があるわけではなく、喰らったらかなりまずいのであろう上弦の攻撃に村田も初めてじっくりと見る見事な霞の呼吸の技で応戦している。

錆兎があまりに鷹揚に構えているので村田はむしろ心配になってハラハラと戦いの様子を見守っていたが、上弦の肆のとある動きに錆兎がビクリと動いた。

そうして身を乗り出して、
「義勇っ、凪を使ってやれ。
無一郎、炭治郎、次の鬼の攻撃は義勇の間合いから出るなっ。
そしてそれをやり過ごしたらそろそろ片をつけろ。
湯冷めする」
と、おそらくヤバい攻撃が来るのだろうが、なんだかやはりゆったりした声音で指示をする。

言われてすでに着替えを終えて刀を手にしていた義勇はそれを構え、無一郎と炭治郎は一歩下がった。

その瞬間に鬼の壺からはとてつもない数のサンマのような魚が飛び出して襲い掛かってくる。

しかしあまりの数に避けるのは困難に思えたそれは、義勇の凪で防がれた。

「大将が早く片をつけろと言ってるしね。
僕も気持ちの悪い鬼の相手も飽きてきた。
そろそろ死んでくれる?」

「人間の分際で生意気なぁ~っ!!!
死ぬのはお前の方だぁっ!!}
と、そんなやりとりをしながら、義勇の間合いを飛び出した無一郎に上弦玉壺は今度は壺の中から大量の水を放出させる。

義勇はそれに気づいて前に踏み出すが、凪をもってしても防ぎきれないそれが、無一郎と炭治郎を包み込んだ。

大きな水の塊に飲まれた二人は呼吸をするのもままならない。
そこでようやく錆兎が動いた。

「村田、一瞬奴の気をそらしてくれ」
と、刀を構えながら小声で言う錆兎に村田が頷くと、錆兎は以前に一度だけ見たことのある構えを取る。

あ…使うんだ…と、村田は思いながらも、──流流舞いっ!!…と、敵の攻撃を躱しながら翻弄する水の呼吸の参ノ型で、かく乱のために倒せないことは重々承知で上弦に斬りかかった。

それからわずかに遅れて錆兎が前方に踏みこみながら、──壱の型・朱雀っ!!…と、剣先から出した紅い鳥が無一郎と炭治郎を捉えていた水の塊を蒸発させる。

「え?ええ??
これ、炎の型?…じゃないわよね?
師範のところでも見たことないし…」
と混乱したように首をかしげる甘露寺。

その隣で待機中の伊黒は
「水だけじゃないのか…。
桃太郎はなんでもありだな…」
と、むしろ水の呼吸以外の型を使ったことに言及しつつ小さくため息をつく。

そんなギャラリーの反応に我関せずと言った感じで、錆兎は
「さっさと倒しておけよ?」
と無一郎達に声をかけると、何事もなかったようにまた岩に腰を下ろした。

しかしすぐまたサッと立ち上がると、
「…ということでここは大丈夫だな?
無一郎、炭治郎、俺は戻る。
村田と義勇は念のためここに残っておいてくれ。
伊黒と甘露寺は戦えるな?
一緒に来い」
と、それぞれに指示をして返事も聞かずに宿の方へと走り去っていく。

なるほど。
おそらく宿の方に上弦の肆が出たのだろう。
錆兎は気配に恐ろしく敏い。

不思議そうに小首をかしげる甘露寺だが、そこは場数もあって時に考えるより動かなければならないことを悟っている伊黒が、
「行こう、甘露寺」
と、彼女を促した。

「でも…」
と、それでもまだ上弦伍と対峙中の少年二人を気遣うようにチラチラと視線をそちらに送る甘露寺だが、村田が
「こっちは俺が見てるから大丈夫。
”錆兎は通常ありえないくらいに気配に敏いんだ”
と、暗にあちらの異常を感じ取って戻ったらしいことを伝えると、
「じゃあ…私達も行くけど気を付けてね」
とようやく察して伊黒と共に宿へと戻っていった。







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