村田の人生やり直し中_76_炭治郎の暴走

こうして人数分の湯浴み着を借りてそれぞれ部屋で着替えて宿の裏にある露天風呂へ。

それぞれ刀は修理中だが予備は借りているので、いつ鬼がくるともわからないこともあって、それも持っていく。

なんのかんので女体化中の義勇も含めて甘露寺と禰豆子と女子3人で湯に髪がつかないようにと飾り紐で互いに髪を結い合ってはしゃいでいるなか、男性陣は先に風呂に入りながらもあたりを警戒していた。
風呂の脇にはいつ鬼が来ても握れるように刀が置いてあり、その傍は離れない。

女性陣はと言うと濡れた湯浴み着での立ち回りで体を冷やすのもよろしくなさそうと、体をすぐ拭けるように大きなタオルと着替えを用意することを主張した伊黒の気遣いで、もし何かあったとしても体を拭いてケープのように巻き付けることができるタオルの下で大急ぎで着替えての参戦ということになっていたので、男性陣とは反対側の端に着替えとタオルがおいてある。

そしてそれに背を向けて風呂の縁に座って髪を結っていた。


そんな警戒中の男性陣とはしゃぐ女性陣のどちらにも属していない少年が一人。

「昔姉さんの髪でよく遊ばせてもらったんだ」
と、懐かし気に楽し気にそう言いつつ甘露寺の髪を高い位置で綺麗に編み込んでまとめている義勇に熱い視線を送っている。

そんな彼は隣で他の二人の男性陣と共に温泉の湯を楽しみつつも油断なくあたりを警戒中の村田に、
「村田さん、村田さんは錆兎と義勇さんとは最終選別時からの付き合いなんですよね?」
と声をかけてきた。

「うん。そうだよ。
以前も言ったかもしれないけどね、その時に義勇をかばって怪我をしたから、なんだか錆兎にいい奴認定をされたみたいで、かなり良くしてもらってるけど…」
と、村田は深く考えずに口にしたが、彼はそれでなんだかとんでもない方向に考えを暴走させたようだ。

「かばったって…それって、義勇さんが女性だったからじゃないんですか?
普通、同じ立場の同年齢の同性をそこまで守ろうとはしませんよね?」
と、その炭治郎の言葉に、村田は、えっ?と思う。

なになに?
確かに以前は女の子だと思ってたかもしれないけどさ。
お前も一緒の任務の血鬼術で義勇が女体化したっていうのはわかってるよね?
と言おうと口を開いた村田が声を発する前に、炭治郎は言葉を進めた。

「みんな義勇さんが女性なのは血鬼術にかかったからだって言うんですけど、それって実は俺に義勇さんを諦めさせようとしてじゃないかと思っているんですけど…」

「いやいや、ないない。
なんでそれだけの理由でそんな嘘つく必要あんの?
てか、血鬼術にかかる前とかかったあと、どう見ても義勇は変わってるでしょ?」

大柄な錆兎や宇髄、不死川などと居れば小さく見える義勇だが、それでも女体化前は炭治郎と同じ165cmはあったわけだし、今、女性になって151cmの胡蝶しのぶと同程度の体格になったのと変わらないと言うのは無理がある。

そう言ったのだが炭治郎は納得しない。

「いや、変わったのは性別じゃなくて年齢だったんじゃないですか?!
だって義勇さん、以前だって男にしては綺麗すぎたし、今の義勇さん、村田さんと出会った頃の13歳くらいの義勇さんなんじゃないですかっ?
村田さん、本当は知ってるんですよねっ?!」
と、詰め寄られた。

「いやいや、知らないってっ!
義勇が女の子だった時代なんて俺が知っている限りでは1分1秒だって存在してないよ?
少なくとも俺が最終選別であった頃からこの前の血鬼術で女の子になるまではずっと男だった。
選別時に一緒に入浴したこともあるから確かだよ」
と、とりあえず誤解を解こうと指摘のあった最終選別時の性別がわかるエピソードを語ったわけなのだが、何故か
「い、一緒に入浴っ?!!
村田さん、不潔ですっ!!見損ないましたっ!!」
とわけのわからぬ反応をされて、村田は本当に途方に暮れた。

なんだろう…錆兎も義勇のことになると大概理性を失うが、炭治郎のそれは思考の大暴走と言って良いレベルなんじゃないだろうか…。

もうやだ、鱗滝一門。
いや、義勇が関わらなければ二人ともいい奴だけどさ…。

そう思いつつも、今はそっと伊黒の方に逃げておく。
いや、甘露寺と煉獄以外には塩対応の伊黒に逃げるなんて大概だと思いながら…。








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