「冨岡さん、冨岡さん、これっ!可愛いでしょう?
お揃いでつけましょうよ」
宿でご機嫌で髪飾りを差し出す甘露寺。
それを受け取って髪にかざして見せる義勇もまんざらではないようだ。
そんな二人を見守るのは錆兎だけではない。
彼の隣には何故かうんうんと楽し気に頷く伊黒小芭内。
何故彼がここにいる?と突っ込みたいところだが、そこに甘露寺がいるから、という答えはわかり切っているので敢えてもう口にはしない。
そうしてそんな彼女(?)達を見守る彼氏(?)達、どちらにも所属をしない村田は、彼らのためにせっせと茶をいれていた。
このところ皆任務が立て込んでいたので、即修理が必要というところまでは行かなくとも、時間が許すなら刀の手入れはしておいた方がいい。
なのでもちろん柱として日々任務に飛び回っている伊黒も全く必要がないのに同行しているわけではなかった。
だが、刀の手入れをしている間は当然だが任務にはつけない。
なので一度に皆というわけにもいかず、刀の手入れは順番だ。
そんな中で今回、甘露寺、無一郎、宇髄、そして村田と4人も同時に刀の手入れに入るのは異例のことである。
それだけではない。
普段は柱の手が足りない時に任務の穴埋めをする錆兎までこちらに居るのだ。
なのでこれ以上任務に就ける状態の柱は削れない。
ということで当然だが伊黒は任務待機組だったのだが、今回多数がこちらに来ているのは上弦の肆、伍と遭遇する可能性が高いからということなので、伊黒が自分も経験を積みたいと申し出て、宇髄が自分は一度対戦したから、と、譲ったという経緯がある。
そういう意味では本来は村田も誰か上弦と対峙したことのない柱に譲った方がいいのだろうし、本人もそう申し出たのだが、色々と扱いの難しい炭治郎と禰豆子そして義勇のお守り、そして絶対に崩れては困る錆兎の補佐役を兼ねられるのは村田しかいないと言われて、大人しく同行することにした。
しかし村田はすでにこの一行に同行したことを後悔し始めている。
炭治郎は兄弟子たちと一緒で嬉しいらしく義勇にまとわりついては、それを錆兎を独占したいから自分が錆兎と居るのを阻止しようとしているのだろうなどと言うわけのわからぬフィルターのかかった義勇に苦い顔で追い払われてはまとわりつきの攻防を繰り返しているし、炭治郎が大人しくしていると、前述のようにまるで二組のカップルの中で一人紛れ込んでしまったお邪魔虫感が半端ない。
錆兎は村田に気をつかってくれるが、それで義勇が拗ねるのでかえってめんどくさく、もういいから自分のことは空気か部屋の付属品と思ってくれと思う。
もちろん、同じく甘露寺が気を使って話しかけてくれたりしたものなら、伊黒にすごい目で見られるので、本当に居たたまれない。
結果…もう自分は旅館の仲居とばかりに、お茶くみや連絡係など、雑務に精を出すことにした。
まあ、温泉は気持ちいいし、飯も美味いので、悪い事ばかりではないが、やはり早くこの状況から脱したい。
普段なら鬼などでない方がいい。
それが上弦なんてなおさらだ。
でも今回ばかりは(上弦の肆でも伍でもいいから、早く来てくれよ)と、村田は思うわけである。
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