村田の人生やり直し中_70_戦闘開始

──善逸が地下に連れ去られたらしいっ

と、ムキムキねずみからの報告を受けた宇髄から連絡が来たのは、猗窩座がこちらを訪ねて来てから1週間ほど経ったある日のことだった。

幸いにしてちょうど錆兎が鍛錬から戻ってすぐだったが、あまりに長く今のこの生活が続いていたので、急を要すると言うのに義勇の着替えが間に合わない。

「ん~、これでも刀は握れると思う」
と、ヒラヒラと華やかな着物を動きやすいように少し気崩して刀を手にする様子は戦いの場に似合わず華やかで愛らしく、村田も少々平和ボケしてしまったのか(百舞子が見たら喜ぶだろうなぁ…)などとそんなことを考えていた。

「刀を握れるかより攻撃を避けられるかの方が重要だぞ」
と、それに少し眉間にしわを寄せる錆兎。

しかし義勇はそれにも
「大丈夫!凪で防ぐし、それで防げないような接近戦には持ち込まれないよう錆兎がかばってくれるだろう?」
と愛らしい笑みを浮かべると、ふわりと久々に見る隊服姿の錆兎の腕をとった。

それでなくとも義勇に弱い錆兎がそんな風に言われればもう譲るしかない。
自分がなんとか気合と根性で守るしかないということで義勇はそのままの姿で参戦決定。

──さすが錆兎っ!判断が早いっ!
と晴れやかに笑う義勇は非常に不思議なのだが隊服を身に着けた男の姿の頃より強く見えた。


こうしてすぐ隣の京極屋に急げばすでに戦闘が始まっていて、炭治郎と禰豆子がこちらも綺麗な女性体の鬼と戦っている。

それをのんびりと眺めている錆兎に
「炭治郎達を助けないでいいのっ?!」
と村田はせっつくが、彼は
「あ~…死にそうになったらさすがに介入するが、とりあえず宇髄が戻るまでは下手に手を出して相手を追い詰めたくはない。
お前の言う通りなのだとしたら、兄が出てきて2対1になったらさすがにやっかいだろう?
宇髄が来たら一気に片付けるがそれまでは炭治郎を信じてみようかと」
などと言う。

いやいや、炭治郎達死んじゃうんじゃない?!
と、村田もさすがに一瞬言おうと思ったが、考えてみれば前世ではみんなが揃うまではなんとか生きて時間を稼いだわけだし、なんとかなるのか…と考え直す。

そんななんとかなるか…と思い直した村田の脳内を覗いたかのように、錆兎は
「あいつは鱗滝さんが育てて俺が鍛えた自慢の弟弟子だからな。強いぞ?」
と、腕組みをしたままそう付け加えた。

しかしそこでポツリと
「まあ…お前が気になると言うなら、救出作業のほうを手伝ってきたらどうだ?
早く救出を終えればそれだけ早く宇髄の手が空いて介入できる」
と言うあたり、それでも若干は心配しているのだろう。

そのあたりの素直でない瘦せ我慢は敢えて指摘をせず、万が一の時の介入要員として錆兎と義勇をその場に残したまま、宇髄から連絡のあった京極屋の地下に急いだ。


京極屋は上弦の陸の堕姫との戦いで建物も一部崩れ落ち、人は逃げまどっていて、そんな中、皆が逃げる揚屋の方へと走り寄り、大きく穴の開いた地下へと飛び降りると、すでに宇髄と伊之助が善逸や宇髄の奥方3人を含む捉えられていた人々を堕姫の帯の中から救い出した後だった。

そこに姿を見せた村田に宇髄はちょうどいいとばかりに
「ああ、いいとこに来たな。
俺はちょっと上弦の陸の片割れの首取ってくるから、うちの嫁達と一緒に救出した女たちの避難誘導頼むわ。
で、安全なとこまで逃がしたらこっちに合流してくれ」
と言うと、返事も聞かずに奥方3人と伊之助を連れて、錆兎が待つ戦場へと走り去っていった。








0 件のコメント :

コメントを投稿