村田は西の方で難航している戦いの助勢を終えて、東京に戻ってくるなり何故かお館様に呼び出される。
お館様から直々になんてことはまずない。
というか、まかり間違ってお館様が直接伝えたいことが出来たとしても、村田が相手の場合は双方と親しい錆兎が間に入るだろう。
ところが呼び出された産屋敷家の部屋には何故かお館様と介助の奥方様の他は村田しかいない。
だからその時点で思い切り嫌な予感はしていた。
…というか、もう普通に何かとんでもない事態が起こっているというのはわかるが、相手が相手だけにこちらからお聞きするのもはばかられて平伏するしかない村田。
それにお館様が
「任務から戻ったばかりなのに急に呼び出して申し訳なかったね」
と、優しい言葉をかけながら、その一方で
「実はね、錆兎に無許可で義勇を実弥達の任務に同行させて、その時に義勇が血鬼術を食らってしまってね…。
命に別条のあるようなものではなくて少女になってしまっただけなんだけど、その鬼を取り逃がしてしまったから、今、実弥と行冥に追わせているんだ」
と、恐ろしい事実を告げてくる。
ああ、聞きたくない。
その先は聞きたくないです。
と、村田は耳を塞ぎたくなったが、相手がお館様ではそのささやかな願望を通すわけにはいかず、顔をひきつらせた。
もちろんお館様はわざわざ村田を呼びだしておいてそこで結論を出さずに話を終えるなんてことはして下さらない。
にこにこと食えない笑みを浮かべつつのたまわった。
──ということで…明日には任務から戻ってくる錆兎に事実を伝えて欲しいんだ……と。
やっぱりそうくるのかあぁあ~~!!!
村田は頭を抱えて思う。
「いやいやいやいや、そういうことならお館様から伝えられた方が良くないですか?!」
慌てて顔の前で手を振る村田。
だがお館様は相変わらずの読めない笑顔で
「う~ん…。私だと錆兎にすごく叱られるから」
などと本気だか冗談だかわからないことを口にするので、村田はそれに突っ込んでいいやらどうやら困ってしまった。
結局…相手は鬼殺隊の総帥で村田は一応隊士の頂点の位の末席に居るとはいえ飽くまで雇われ人だ。
拒否権があるわけがない。
錆兎はとにかく義勇のことが一番なので、お館様が“叱られる”なら、下手に自分なんかが伝えたならば縁を切られるくらいはするんじゃないだろうか…。
そんな恐ろしい未来予想図に怯えながら、村田は錆兎が任務に戻ってくるのを待つことになったのだった。
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