「…義勇…その格好はなに?錆兎もさ…」
列車の任務当日…待ち合わせ場所の駅の構内で炭治郎達と一緒に錆兎と義勇を待っていた村田は、二人が連れだって来た姿を見てぽかんと呆けた。
義勇は落ち着いた青地に白い花をあしらった女性用の着物着ている。
周りも振り返るような美男美女っぷりに村田の隣で炭治郎と善逸が小さく歓声をあげた。
──やっぱり義勇さんは綺麗な方ですよねっ。
──なになにっ!お館様の補佐役とかだとあんな綺麗な女性がついてくれるのっ?!
と、おそらく義勇が男だと知らないのであろう二人の率直な感想はガン無視することにして、村田が錆兎達に声をかけると、錆兎はゆったりと村田に手を振ってくる。
その仕草すらもうどこか大物感漂うカッコよさで、周りにいる一般の女性たちが目をハート形にしながら様子を窺っていた。
「ああ、もう皆揃っていたのか。
待たせて悪かったな。全員分の弁当を買っていたんだ」
と、片手に持った大きな風呂敷包みを掲げて見せる。
「牛鍋弁当なんだが…食べられない奴はいないよな?」
と聞くと、また今度は伊之助も含めた3人組が喜びの声をあげた。
「弁当は良いけど…お前の格好は?隊服どうしたのさ?」
と、そんな中で村田が再度質問を口にすると、錆兎が炭治郎に弁当の包みを手渡しながら、
「俺は全面的にお前を信じるが、他にこの任務に柱並みの人間が二人必要だと説得する理由がないからな。
俺は日輪刀は持参しているが非番で個人的に旅行に来ている。
だから私服だ。
義勇のこの格好は……」
と言ったあとに義勇にチラリと視線を向けると、義勇は今身に着けている女性用の衣服について恥じらうこともなく、むしろドヤっとした顔で
「隊服の錆兎もカッコいいが、私服はさらにカッコいい。
そんな世界の至宝ともいえるカッコよさの錆兎に並ぶからにはやはり少しでも似合いの格好をするべきだという判断からの選択だ」
と言う。
なるほど。
まさか村田の夢で…という理由では人材不足の鬼殺隊でまだそこまで必要かもわからない任務に希少な柱とさらに希少な錆兎を投入することは錆兎の立場でも難しいということか。
それでもなお村田の申し出をなんとか叶えてくれようと、滅多にとれない非番の日を費やしてまで来てくれる友情には本当に感謝の気持ちしかない。
まあ…義勇が非常に楽しそうなので、義勇の娯楽も兼ねて…というのもあるのかもしれないが。
ともあれ、3人の新人の少年を引率する先生のような村田と若い夫婦二人といった風情の5人はこうして鬼の罠と知りつつも列車に乗り込む。
そして美味い弁当に舌鼓を打ちながら、鬼が仕掛けてくるまでつかの間の列車の旅を楽しむことにした。
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