炭治郎の諸々が終わったことで村田は次の記憶に残る難関に取り組むことにする。
下弦の操る列車の任務。
それは下弦を倒したあといきなり出くわした上弦の参と戦って煉獄が戦死した任務だ。
いくら煉獄が危険だからと言って鬼を放置するわけにはいかない。
だが自分が代わったところで煉獄が倒せなかったほどの強さの上弦を相手に勝てるはずもない。
というか、誰なら無事にやり過ごせるのか…と考えると、対象者など本当に限られてくる。
前世で上弦の参を倒したのは義勇と炭治郎の二人だが、前世の義勇は少しばかり違う人間だったし、炭治郎は上弦の陸を始めとして様々な上弦と戦った上で柱稽古を超えたあとの成長した炭治郎だったので、今の時点ではその両方が揃ったとて絶対に倒せないどころか瞬殺だ。
前世では夜明けぎりぎりまで上弦の弐を相手に粘ったカナエならワンチャンあるかもしれないが、可能性があるかもしれない…くらいの確率で彼女の身を危険に晒すのはどうかと思う。
宇髄は上弦の陸戦でなんとか上弦の陸を倒したものの再起不能な怪我を負って引退しているし、不死川は前世では最終決戦で悲鳴嶼と無一郎、そして弟の玄弥と4人がかりで上弦の壱をなんとか倒した以外、上弦と戦った実績がないし、一人でどこまで戦えるのか未知数だ。
伊黒と甘露寺は現時点では煉獄が敵わない相手に敵うとは思えず、あとは無一郎と悲鳴嶼…。
無一郎は上弦の参は良いとして、精神を操る下弦の壱との相性が危ぶまれるし、そうなるともう悲鳴嶼しかいないのか…。
村田が色々悩んだ挙句、村田は見えないものを見えているのだと思うとそのあたりを信じてくれた錆兎を訪ねて、列車の任務について知っている限りのことを夢として伝えた上で煉獄を送り込まないで欲しい旨を申し出ると、錆兎は
「なら人選を考え直さねばな」
と、どうやらこれは煉獄を送る予定だったらしく、腕組みをして少し考え込んだ。
「確実に煉獄以上の柱となると……」
と錆兎が言うと、茶と茶菓子を盆に乗せてきた義勇が村田と錆兎の前にそれを置きながら、にこりと笑う。
「なら錆兎が行けばいい。俺も行くから。
炭治郎達にも慣れているし、最悪夜明けを待てばいいのだろう?
それなら錆兎が相手を引き付けている間、俺が凪で攻撃を防ぐ」
「ふむ…それもありか…」
え?ありっ?そんなのありなのっ?!
と、村田は二人のやりとりに一瞬思うが、よくよく考えてみれば確かに義勇の凪は相手を倒すということなら意味はないが、相手の攻撃をかわして時間を稼ぐという意味なら有効だ。
もちろんその義勇に攻撃が行かないよう、錆兎が相手を引き付けておくと言うのも良い手段だと思う。
「じゃあそうするか。
ということで上弦の参の相手は俺達がするとして、大勢の客を巻き込まない様に守るのに炭治郎達だけではまだ心元ないし、お前に来てもらっていいか?」
と言う錆兎に否と言えるはずがない。
今生で自分たちが初めて対峙する上弦となることだし、自分自身も気になると言うこともあり、村田は迷うことなく了承する。
おそらくこれが絶対に安全とは言えないまでも、今の人材の中では一番生き残る確率の高い組み合わせだろう。
そう思いつつもやはり不安に揺れる村田の耳に入ってきたのは
「むふふ。錆兎と列車の旅っ。楽しみだなっ」
という実にお幸せそうな義勇の笑い声だった。
0 件のコメント :
コメントを投稿