炭治郎が引きずり出されて開かれる臨時の柱合会議。
その場でお館様からの事情説明と共に鱗滝元水柱の、禰豆子が人を喰ったなら自分と村田が腹を切って詫びるという手紙が読み上げられる。
それに続いて錆兎のもし禰豆子が人を喰った場合は自分が責任を持って禰豆子とその兄の炭治郎を処断したうえで、村田が腹を切る時に親友である自分が自ら介錯をする旨を宣言し、それが自分にとってどれだけ辛いことなのかを切々と説明する言葉にまた半泣きになる。
さらにその最後に付け加えられた、そういう事態になったなら義勇が大好物の鮭大根を一生口にしないと言っているという報告はちょっとしたご愛敬と言ったところか。
前世よりもずっとかばってくれる相手が多いことに村田はすでに感動していたが、前世と違っていたのはこれだけではなかったようだ。
一通り説明が終わったその席で村田は
──あ~…鬼は信用できねえ…がァ、まあ村田は信用できるから俺は保留で…
と、前世では信用できない派の急先鋒だった不死川が真っ先に口にしたそんな言葉に目を丸くした。
え?え?お前なんでそんな丸くなってんのっ?!
とぽかんと口を開けて呆けていると、それを後押しするように
「そうよね。鬼だって好きで鬼になった人ばかりじゃないもの。
ましてやサラサラさんがそこまで言う子が悪い子とは思えないわ。
私も様子見に賛成よ」
と胡蝶カナエが両手を胸の前で合わせたまことに可愛らしい動作と共ににこにこと美しい笑顔を浮かべて言う。
そこに煉獄が
「鬼はすべからく滅すべし!
…というのは基本だが、村田、不死川、胡蝶と、先輩柱だけでなく、柱の大先輩である鱗滝さんや柱のまとめ役である錆兎まで信じるというのには、何か他の鬼とは違うものがあるのかと思う。
俺にはそれが何なのかわからないが、俺よりはるかに経験を積んだ人々がそう言うならそうなのだろう。
…ということで、鬼は信じ切れるかと言われれば信じきれないが、先人たちの判断を信じて俺も保留で」
と言うと、その煉獄の元継子である甘露寺も
「そうよねっ!
私も煉獄さんや先輩諸兄が信じるものを信じますっ」
と、彼女らしい明るい笑顔で宣言した。
そうなると甘露寺の言うことは全て正しいという伊黒も
「俺も鬼など全く信じられないが、甘露寺が信じると言うなら仕方ない。
ただし甘露寺の信頼を裏切るようなことがあれば、その時は楽に死なせはしない」
と、鬼は信じないが甘露寺の言うことには賛成と、とても消極的ではあるが賛成に票を入れてくれたようだ。
宇髄も
「…これで俺一人反対したところで結果は変わんねえよなぁ。
無駄な反対しても仕方ねえ。
それならせいぜい開き直って鬼の生態について色々研究してみんのもいいんじゃね?」
と流されてくれる。
そして最後の一人、悲鳴嶼だけは最後まで反対していたが、最終的にお館様の説得に応じる形で矛を収めた。
とりあえずこれで炭治郎の件は一件落着だ。
あとは特に義勇が面倒を見たということもきいていないから、必要な方向へと勝手に進んでいくだろう。
禰豆子が居るのでカナエが花屋敷で面倒をみようかと申し出てくれたが、水柱屋敷で面倒をみているからと辞退すれば、一応女の子なので何か男性で困ることがあれば遠慮なく言って来てくれと言ってくれた。
前世で聞いていたのとは驚くほど違う好意的な対応である。
もちろん前世がそうであったように本来ならいい反応はされないということは今生の炭治郎は当然知らないので、実にのんきに
「義勇さんは鮭大根が好きなんですね。
今度口添えの礼に作って持っていこうかな」
などと言っていて、村田はまたまた大きくため息をつくことになった。
むしろ礼をするなら前世では一番反対をしていたのに今回は真っ先に賛同の意を表明してくれた不死川だろうと思う。
…が、それを言ったら馬鹿正直におはぎを持って追い回してキレさせるなどと言う前世の義勇のようなことをしかねないので黙っておくことにした。
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