義勇の言葉の真意の方はわかった。
それが発展した場合の錆兎の対応もわかった。
正直錆兎と義勇の関係については二人が友達だろうと仲良しだろうと、よしんばそれを超えて出来てようと二人の自由だ。
誰にも迷惑をかけることもないし、二人に憧れるガチ勢な隊士達が勝手に泣くくらいで大方は問題ない。
それよりも問題なのは炭治郎の方だ。
「あのさ、話は変わってお前と炭治郎のことなんだけど…」
と切り出すと錆兎は
「ああ、呼び名のことか?」
と、これもすっかりお見通しとばかりにクスリと笑う。
ああ、もしかしてこれはわざとだったのか?と村田がため息をつく。
「炭治郎に他との兼ね合いもあるからお前のことは”さんづけ”しろって忠告したんだけど、もしかして余計なことだった?」
と、それでもはっきり聞いてみれば、錆兎は
「そうだな…。
普通なら目上の人間には”さんづけ”だが、今回は敢えてつけさせなかった」
と、頷いた。
「…何故?…って聞いても?」
「親しい仲というのを他に示すためだな。
炭治郎が先生に師事し始めたのは俺が鬼殺隊に入ってからというのは変えようのない事実で、兄弟弟子と言っても義勇のように文字通り兄弟に準ずる関係だというには弱い。
だから兄弟弟子であると同時に愛弟子という立場になるように俺自身も暇を見つけては狭霧山に足を運んで炭治郎に稽古をつけたんだ。
呼び方も義勇が俺を呼び捨てで呼ぶように、炭治郎にも同様に呼ばせて、気の置けない家族に準ずる関係であるということを内外に示せば、あいつの立場も少しはあがるだろう?」
ああ、もう心憎いほどの気遣い根回しに感動する村田。
礼を言うと
──村田が連れてきた人間だからな
などと言ってくれるではないか。
お前、どれだけ俺のこと大切に思ってくれてんだよっ…と感極まり泣きそうになってしまう。
本当に本当に、前世と違って今生ではこの男が生きていてよかったと思った。
炭治郎の件を速やかに進めるためというのはもちろんだが、それ以上に前世では戦いに追われるばかりでそこまで密なものはなかった友情というものを経験できたのは嬉しい。
一期一会がほとんどだった以前と違い、交友が続いて思い出が積み重なっていくのはなんだか心を温かくする。
村田は目の前の自分のことを親友と言ってくれる相手のこと以外は想像もしていなかったのだが、他にも自分が変われば人も変わっていた。
この数日後…前世と同様炭治郎が柱合会議に引きずり出されることになるのだが、実は錆兎が生きていて味方をしてくれるだけではなく、その影響なのかなんなのか、状況が色々と変化していて、村田は驚くことになる。
0 件のコメント :
コメントを投稿