村田の人生やり直し中_51_誓いの意味

──俺と錆兎の関係?う~ん…少なくとも将来を固く誓いあった仲ではあるな。

隊士生活も始まって水柱邸に住み始めた炭治郎にどうしてもと頼まれて義勇を館に招待。
炭治郎はその時に直接例の質問をして、義勇にそう答えられて玉砕したらしい。

しかしその日はがっくりと肩を落としたものの、翌日には
──でも錆兎…さんは地位も強さもあって人間的にも良い人だから、義勇さんは幸せになれますね。
とそれを祝福するのだから、たいしたものだ。
炭治郎の方こそ本当に性格が良い少年だと思う。

まあそれはおいておいて…村田はその件においていくつかの素朴な疑問を感じていた。

まず…(炭治郎…義勇が男だって知ってる?)…ということで……
いや、普通なら同性同士でただの兄弟弟子?それ以上の何かじゃないの?とは思わないだろうし…と、村田は思う。

義勇の錆兎大好き❤オーラは確かに同性の友人に対するものを超えている気がするし、錆兎は錆兎で、基本的に自分よりも力の弱い人間に対しては色々親切な上に相手が一緒に育って唯一生き残っている大切な兄弟弟子ということで、義勇に対する態度はやはり同性の友人に対するものには見えない。

そうでなくとも女版前田とも言える隠の衣装係の百舞子の力作である非常に可愛らしいどう見ても女物だろうと思われるような型の隊服を着ているし、そもそもがそのせいなのかガチでそう勘違いしている人間が多いのか、鬼殺隊での義勇のあだ名は【姫様】だ。

これは炭治郎が勘違いしても仕方ないのでは?と思わなくはない。
よほど確認してみようかと思ったが、まあこれは勘違いしていたとしても諦めているようだし、現状維持で問題ない状態な以上、好奇心を満たすためだけに変に藪をつついて蛇を出したくはないので放置しようと思う。


そしてもう一つの素朴な疑問。
それは義勇の言葉だ。
『錆兎とは将来を固く誓いあった仲』…というのは本当だろうか?

いや、義勇が嘘をつくとは思えない。
良くも悪くも色々深く考えない人間なので、炭治郎の気持ちとか諸々に気づいてかわすために言っているとかいう可能性はまずないと思う。

しかし…しかしだ。
彼らは同性なのだ。
もし本当にそういう仲だとしても、一般的でない間柄ではあるのだし、もう少し口にするのに躊躇しないか?

…ということで、こちらは錆兎なら少しばかり聞いてみても変な暴走はしないだろうしと、好奇心が勝って、禰豆子のこともあるので炭治郎が任務でいない時にこっそり水柱邸に様子を聞きに来ることになっていた錆兎に話を聞いてみることにした。


そういうわけで炭治郎が少しばかり離れた任務で不在の昼下がり。
手土産にとちょうど昼食時だったこともありウナギ弁当を携えて訪ねてきた錆兎と美味しく昼食を頂きながら、義勇の発言について聞いてみた。

──ああ…なるほどなぁ…。
と村田の話を聞いて錆兎はずずっと茶をすすりながら笑う。

錆兎の側も特に動揺した様子も気まずそうな様子もないので不思議に思っている村田に、錆兎はおそらくな…と、その言葉の真意を教えてくれた。

「俺と義勇は同時期に同じ師範について一緒に鬼狩りを目指したからな。
将来は立派な隊士になって鬼のない世の中を作ろうと何度も誓い合ったから、そのことを言っているんだと思うぞ?」
と、説明されれば、本当になんのことはない言葉で拍子抜けしてしまう。

「なんだぁ…そういうことか」
と村田がホッと息を吐き出すと、錆兎は
「まあ俺達にとってはそれはとても重要な誓いではあるんだ。
双方家族を鬼に殺されて全てを奪われて先生の元にいたからな。
今でも俺も義勇も俺達の代で無惨を倒して鬼のいない世の中を作ろうと本気で思ってるぞ?」
と当たり前のように言った。

「うん。それはわかる。
俺も家族も隣近所も全員…幼馴染の初恋の子もみんな鬼に殺されたから」
と村田もそれに同意する。

「…でもさ、将来を誓い合ったって言うと、別の意味を想像するよな。
義勇が万が一そういう意味で言ってたらどうする?」
と、それはちょっとしたいたずら心というか冗談で聞いてみたはずだった。

しかし錆兎はいたって真剣な顔で
「まあ…そういう意味で将来を誓い合ったという記憶は少なくとも俺にはないが、もしそう取られるような発言をしていて義勇がそれをそうとったとしたら…」
と、存外真面目に考えこむ。

そしてしばらくして出てきたのは…
「その時は義勇の好きにさせるかな。
俺はおそらく妻帯することはないし、義勇が特に嫁とかは要らんと言うならこのまま一緒に住んでいるだろうから、結果的には変わらないだろうしな」
という答え。

「…え~?義勇の好きにさせちゃうんだ?」
とそれに村田がそういえば、錆兎は苦笑して
「俺は最終的に義勇には敵わん。
義勇がどうしてもそうしたいと言えば、それが俺達の決定事項だ」
と、断言する。

なるほど、そういえば最終選別の頃から錆兎は義勇に甘かった。
言われてみればそういう結論に至るのも想像できてしまう。

もっとも義勇は義勇で錆兎が一番なので、互いに相手には敵わないと思っているのだろうが…。







0 件のコメント :

コメントを投稿