不死川に会うのは本当に久々だったが、そのあまりの変わり様に驚いた。
まず今までなら村田を見かけると木刀を振りかざしてくるのが常だったが、振りかざすどころか木刀を持参すらしていない。
錆兎は不死川がやさぐれていると言っていたが、そんな気力すらなくしていそうだ。
「…不死川…大丈夫?体調悪い?」
と、もう久々に会ったことに対する挨拶もそこそこに心配でその顔を覗き込む村田を不死川は視線を落としたまま
「…体調なんざぁ関係ねえ…」
とぼそりと呟く。
「関係なくないでしょっ!
お前もう柱なんだから、鬼を斬るだけじゃなくて他の隊士が安心できるくらいの人間にならなきゃダメなんだよっ!」
「柱じゃねえっ!!」
「い~や、お前は誰が何と言おうともう風柱だからねっ!!
柱じゃないとか俺の方が言いたいよっ!!
俺だって無理無理嫌だっ!って言っても錆兎に却下されて今本当に泣く泣く水柱やってんだからねっ!!」
「てめえはいいだろうよっ!!」
「なんで俺はいいのよっ!!」
「てめえは才能があって実力で柱になってんだからよっ!!
俺は匡近のおかげで下弦倒せたのにその匡近が死んじまったからって実力もねえくせに柱になんざなれやしねえっ!!」
不死川と怒鳴り合ったのなんて初めてだ。
互いに怒鳴ってぜえぜえと息をつく。
「…風柱は…俺じゃねえ…匡近だァ…」
ぎゅっと白くなるほどに強く拳を握り締め、不死川は絞り出すような声でそう言った。
それに村田は小さく息を吐き出す。
「あのね…その匡近さんが強い人だったとしてもさ、実際問題亡くなった人に鬼は斬れないでしょ。
お前が実際にその人に実力で敵わなかったとしてもさ、これから鬼を斬っていける人間はお前で…斬っていかないといけないのもお前なのっ」
「…だから…俺は柱になる実力なんてねえ…」
「実力がないからやらないでいいわけじゃないのっ」
「…お前は他人事だから……」
はああああぁぁ~~~~!!!!
村田はその言葉に大きくため息をついた。
「あのさ、教えてやるよっ、最初っからっ!!
俺がどうして今水柱なんてやってんのかさっ!!」
幸いまだ現地まではやや距離があり、若干話す時間はある。
実は今まで他には自分が強いと思われているのは本当に誤解なのだと真剣に説明したことはなかった。
それを言っても状況は変わらないしやらねばならないことはやらねばならず、なのに他人を不安にさせる意味はないと思ったからである。
だが村田が本当に弱いのだと不死川が知ってもおそらく何もデメリットはない。
たぶん…。
だからいいか、と、村田はやけくそのように話し始めた。
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