勝てば官軍桃太郎_34_決戦前

意外というか案の定というか、継子柱の中では不死川が一番赤ん坊の世話が上手く、また好きだった。

錆兎がやると思い切り肩に乳を吐かれるゲップを出させる作業も、不死川がやると上手に出来る。

まあ父親としては若干情けなさも感じるところではあるが、それでも嫌な気はしなかったのは、ひとえに赤ん坊の世話をしている時の不死川は楽しげで、でも時折り何か悲しそうな顔を見せるからだ。

7人兄弟の長男だった彼は鬼になってしまった母の手で兄弟のうち一番上の弟以外の5人を殺されて、その母は自分の手で殺した過去を持つ。

その唯一生き残った弟とも、巻き込まないようにと二度と会わない決意をしているとのことで、守ろうとしていたものを全て失って天涯孤独という身の上だ。

言葉や態度は粗暴に見えるが心根の優しい面倒見の良い男なので、いずれは良い娘でも見つけて世帯でも持つだろうが、それまではもし彼がそれを望むなら、家族に準ずる者として遇してやりたい気がある。



そろそろ最終決戦を2日後に控えて、水柱邸にて最初からお館様の側に詰める錆兎、不死川、宇髄の3人で打ち合わせ予定の日。

あとは宇髄を待つだけということで、不死川は授乳を終えた赤ん坊達のゲップとオムツ替えに勤しんでいる。


「よぉ~し、オムツ替えてすっきりしたなぁ。
頼光、お前はちょっと爺ちゃんの所にいけ。
次、右近、来い」
と、オムツを替えた長男は鱗滝に渡して、授乳を終えた次男を受け取り手慣れた様子でゲップをうながす不死川に

「なんだか手慣れすぎて、まるでうちの長男だな」
と、錆兎が笑うと、

「長男なんて可愛い年じゃねえだろうがァ」
と、口を尖らせるが、

「いやいや、実弥は可愛いぞ。
弟子はみんな可愛いが、お前は俺が初めて1から教えた弟子だからな」
と言ってやると、ガリガリと頭を掻いて

「…ったく、恥ずかし~んだよォ、錆兎は」
と、赤くなるが、その後

「だけどまあ、あの頃は色々ぎりぎりですさんでて、助けてもらっておいて刀を奪おうとするなんてクソ野郎だったしな。
錆兎に拾われてなきゃ今頃どうなってたかわかんねえし、すげえ感謝してる。
錆兎の子だから余計にこいつらはもう俺も他人って感じがしねえんだ」
と、言いながら、赤子を縦抱きにして背をさすってやると、けふっとゲップをする次男の右近。
それを確認して、乳を飲んで出すものを出したオムツをまた替えてやる。
そして今度はそれを錆兎に渡して、末子の勇人に手を伸ばした。

そうして
「お前らが物心ついた時には鬼のいない世の中にしてやっからなァ。
いっぱい食っていっぱいクソしていっぱい遊んで大きくなれよォ」
と、笑いかけながらも、しかし、亡くした兄弟のことでも思い出しているのかどこか遠くをみるような目で赤ん坊のふくふくとした頬に頬ずりをする。

そのままゲップをだしてオムツ替えが終わった頃に宇髄が来たので、起きている頼光は鱗滝に任せて、右近と勇人は寝室に寝かせに行った。

「…というわけで、明後日は決戦だな」
と、テーブルの前に座り込んで言う錆兎。

今日は二郎も千寿郎もいないので、不死川が茶をいれて各自の前においたところで、作戦会議が始まった。










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