全て打ち明けてしまった事によって、まどろっこしいことは何もなく、順調に終わる打ち合わせ。
鬼との戦いは夜と決まっているため、夕方までは藤の家で待機がてらの打ち合わせだったのだが、こうなると時間が余り手持ち無沙汰になって、話は自然と互いに嫁のいる身ということで嫁の話題へ。
ま、子どもができたってことは、違うんだろうが…」
「ほお?」
同期達と違って宇髄が義勇にあったのは鬼殺隊に入ってからなので、男女共通の隊服からは性別はわからぬはずだが…さすが元忍者、なにか目のつけどころが違うらしい。
実弥などは義勇が自分で男だと打ち明けてからも、半分信じてないくらいなのだが…。
そう思って目を丸くすると、宇髄の方も
「怒らねえんだな。お姫さんも大概お前さんのことを好きすぎるが、お前さんも逆にお姫さんにめちゃ惚れ込んでるしな、それを男とか言ったらてっきりキレるまでは行かなくともムッとくらいはすると思ったが…」
と、目を丸くする。
「ああ、確かに惚れ込んでる。
さきほど話したように、前世で一度亡くした時はもう生きる理由は義勇の復讐のためのみだったくらいだしな。
あいつは俺の全てだと言ってもいい。
だからこそ、男だというアイツを構成する要素を否定するつもりは全く無い」
「は?」
会話が全くつながらない、わけがわからない、と、宇髄の顔に描いてある。
錆兎も宇髄には大概本音がダダ漏れるが、逆もしかりで、宇髄の方も本来は本音を上手に隠す人間だが、錆兎にはよく本音をこぼすようだ。
今もただただ困惑しているという感情をそのままに錆兎に視線を送ってくるので、錆兎は肩をすくめて澄まして言う。
「義勇は男だぞ。
嫁…という言葉にこだわるのは、おそらく義勇の姉が祝言前日に鬼に殺されて喰われてしまっているから、あいつにとって手に入れがたい幸せは祝言、嫁の形をしているんだ。
だから狭霧山に来たばかりの頃、まだ俺もあいつもほんの子どもだった頃に、師範に何になりたいと聞かれた時にあいつは俺の嫁になりたいと答えている。
単に好きな相手と一緒に幸せになることと言いたかったんだろうが。
で、まあ俺も義勇と幸せに暮らしたいというのがあったし、それがどういう名で呼ばれようが構わなかったから、義勇が呼びたい名で呼ばせてた」
「いやいや、それはわかる。わかるけどな?
じゃあ子どもが出来たってのは嘘か?」
「いや?嘘じゃないぞ。
確かに義勇の腹には俺の子がいる」
「…どういうことだ?」
ますますわけがわからないという宇髄に、錆兎は内緒な?と念押しをしながら、子どもが出来た経緯について話した。
「お前……」
全てを話し終わると宇髄がどデカいため息をついて言う。
「ほんっと御旗になるべくしてなったんだな…」
「は?」
と、今度は錆兎がわけがわからずきょとんとした。
「何故ぎゆうとの間に子が出来たことと御旗が関係するんだ?」
と、そこで聞いてみると、宇髄はふっと笑みを浮かべる。
「結局…まあ、以前に一緒に任務にあたった時の俺もそうだったんだけどな、お前、なんか憎めねえんだよな。
主役感がすごくて、もう自分が脇役としてでも良いから、お前を助けてめでたしめでたしな方向に持って行きたくなるっていうか…。
上弦の参もな、義勇の立場的なものに対する同情もあったんだろうが、お前の人間性みたいなものに惹かれたってのもあるんだろうぜ。
でないとそこまでやってくれねえよ。
ま、嫌でもお前は表舞台に出た瞬間に御旗になっちまうやつなんだから、そのあたりは諦めて、せいぜい仲間を煽ってやる気をださせてくれや。
俺も含めてな」
ぽん!と肩を叩かれてそう言われて、錆兎はますますぽかんとした。
正直じぶんは義勇以外に好かれる人間ではないと思う。
今生でのこの周りからの懐かれ方はおかしいと常々思っていたのだが…
と、そんなことを考えている錆兎の脳内なんてお見通しとばかりに宇髄はおかしそうに笑って
「ま、気にすんな。お前はお前がやりたいようにやれば、周りは勝手についてくから。
とりあえず上弦陸戦。
それが終わればいよいよ無惨戦で鬼のいない世に向けて一直線だな」
と、それは錆兎も思っていることを言われて、錆兎もこくりと頷いた。
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