「よし!涙も止まったな。そろそろ始めていいか?
…というか、お前、本当に湯冷めして体が冷え切ってるぞ。
とにかく布団にはいれ」
と、笑顔の錆兎に布団の中に引き込まれる。
そこでまだ温かい錆兎の体に触れて、義勇は自分の体が冷え切っていることに初めて気づいた。
「さきほどの話だが……」
と、そこで錆兎の手が義勇の頬から首筋、首筋から肩と滑るように触れる。
「柔らかくないかというと、そうでもないと思うぞ。
お前の肌は…白くて綺麗なだけじゃなくて…触れれば吸い付くような感触があって心地良い…」
そう改めて言われて、義勇はなんだかひどく恥ずかしくなって顔を赤らめた。
「…ずっと…あちこち思い切り触れてみたいと思っていた。
でももうこれは全て俺のものだから…ようやく触れられる…」
そう言って浮かべる錆兎の笑みが随分と嬉しそうなものだったので、義勇も嬉しくなる。
相手が欲しいと思っていたのが自分だけじゃなかったということがとても嬉しい。
思わずふにゃりと笑みが浮かんで、
「俺も…ずっとさびとの唇にふれてみたいと思ってた…。
これまでは…鏡に映った自分に口づけてみたりしてたんだけど…さっき実際触れたら鏡みたいに冷たく固くなくて…温かくて柔らかくて驚いた」
と、告白すると、錆兎は一瞬固まって、それからふわりと笑って
「じゃあ…鏡とは違うところをもっと教えてやる」
と言った。
ふぅ…と、全てを終えて息を吐き出す錆兎。
義勇はとっくに気を失っている。
なかなか大変だったし、正直少し物足りない感がないとは言わないが、それでなくても互いに初めてで、さらに難しい同性の性交となれば、ちゃんと出来たほうだろう。
とにかく緊張したし疲労感がすごい。
慣れていないというのもあるのだろうが、こんなことを日常的にしている夫婦はすごいなと素直に思う。
体力より気力が削られた。
…が、それも相手が辛い思いをしないようにというためなので、そんな相手と思いを遂げることが出来た自分は幸せ者なのだろう。
実家に居た使用人の若者達も鬼殺隊の若い隊士達も、そういう相手を得ることが出来ないまま散っていった者も少なくはないのだ。
うん…幸せ…幸せだな、と、錆兎の口から無意識に零れ出た言葉に、眠っている義勇がふにゃりと笑みを浮かべて、その愛らしさに思わず欲が再来しそうな予感に錆兎は慌てて視線をそらし、軽く首を横に振る。
あとはおいおい…。
とりあえず義勇を清めてやらねば…
錆兎はまだまだ体力も残っているしと、義勇を軽々と抱き上げて、湯殿まで運ぶと身体を丁寧に洗ってやった。
そうして寝室に戻って、ちゃんと予備まで用意してある布団を敷いて義勇を寝かせて自分も潜り込むと、いつものようにするりと懐に義勇が潜り込んでくる
そんな様子は昔から変わらず本当に狭霧山のリスのようで可愛らしい。
まあ…こんなに愛らしい嫁に辛い思いをさせてまで己の欲を追求しても仕方あるまい。
当座は義勇だけ満足させてやってあとで抜けばいいか…
性欲は年相応にある。決してないわけではないのだが、前世は生涯独り身で恋人は自分の右手だったこともあり、今生ではこうして大事な相手に触れることができるだけでも進歩だと思う。
それより何より好いた相手とこうやって寄り添って眠れるのが幸せだ。
そんなささやかな幸せを甘受する男には、このあと驚くべき展開が待っている。
もちろん、そう遠くない…時のあとに……
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