村田の人生やり直し中_29_再会と敵対心

──む~ら~た~!勝負しろォ!!!

任務後に寄った藤の家で一泊し、朝食を食べて宿を出たところで、ブン!と木刀が目の前をかすめる。
それを寸でのところでかわすと村田ははぁぁ~とため息をついた。

「あのさぁ、なんでそんなに俺に執着するわけ?
俺みたいな凡人を追いかけまわしても仕方ないでしょうがっ」

もう何度このセリフを吐いたかわからない。
相手は前世でその最期を看取った柱。
そう、不死川実弥である。


思えば出会いが悪かったのかもしれない。

あの初任務から早2年。
錆兎はすっかりお館様の信頼厚い強くて賢くて有能な若き側近という姿が板についてきた。
それでも時折顔を合わせれば村田を親友と呼んで親しく接してくれる。

それは大変喜ばしいことではある。

だが、彼は入隊後まもなく側近として召し上げられた鬼退治の名家の出の天才として知れ渡った人間だ。

それが、相変わらず会えば村田には世話になった救われたとデカい声で過剰評価してくるのである。
そのおかげで、村田は一般隊士の中ではちょっとした有名人になってしまった。


あんな強い天才剣士を助けるなんてさぞやすごい剣士なんだろう。
そんな噂が独り歩きする。

任務をふる上の方はわかってくれているため無茶な任務に放り込まれることはなかった。
が、放り込まれた任務で過剰に強さを期待されて、任務の中で高度なことを求められることも多い。
なので仕方なしに前世とは比べ物にならないほど日々鍛えて鍛えて鍛えているが、柱レベルの天才たち並みとは当然いかない。

今生では錆兎の横でのほほんと生きている義勇をみるたび、これが前世ではあんなすごい柱になるなんてどれだけ努力をしたんだと他人事ながら感心した。

しかしまあとにかく、前世で無惨戦を現役で最後まで戦って生き残った柱の一人は今生ではほぼ戦に出ない。
唯一錆兎が戦いに出る時に限り、彼が獅子奮迅を使う時だけ凪で防御を請け負うのだが、基本は勇者の傍でにこにこと華を添えるために居ると言った生活を送っている。

おそらくこれが本来の彼の姿なのだろう。
とても幸せそうだ。


そしてもう一人。
最後はずいぶんと丸くなって介護をしていた村田に感謝をしてくれて色々気遣ってくれつつ逝った風柱…。

今生で彼に再会したのは二人任務でだった。

集合場所で顔を合わせて懐かしいと思ったのは一瞬。
すぐものすごい顔で睨まれていることに気づいてビビる。

前世の最後ではとても仲良くしていたと言っても、そこに行きつくまでの彼は確かにおっかなかった。

穏やかになったのは無惨を倒したあとなのだから、現役時代はこうだったな…と思いつつも、そこは彼は根っから悪い奴ではないのだと、村田はにこりと笑みを浮かべてみせる。

しかしそれがすでに気に障ったようだ。

──っざけんなぁっ!舐めてやがんのかァァァ??
と、いきなり襟首をつかまれた。

え?え?なんで???
俺なんか悪いことしたっ?!!
と、村田がひたすら驚くも、不死川は三白眼でさらに睨みつけてくる。

そして次に続く言葉が
──ちぃぃっとくれえ強ぇと言われてるくらいで調子に乗ってんじゃねえぞォ!!
で、村田はさらに驚いてしまった。

思わず
「いやいやいやいや、俺はただの平凡な一般隊士だよ?
何そのデマっ!!
俺なんかよりお前の方が全然強いからねっ?!
俺は一般隊士のまま人生終えるけど、お前は柱になるからねっ?」
と驚きのあまり前世と混同してしまってそう言ったのがさらにまずかったらしい。

──てめえっ!!馬鹿にしてやがんのかぁぁ!!!
と、殴られそうになって慌ててよけた。

……ほおぉぉ、”平凡な一般隊士”ってわりに、素早いじゃねえかァ…
にやりと黒い笑いを浮かべて刀の柄に手をかける不死川。

「いやいやいやいや、刀はまずいでしょっ!
私闘は禁止だよっ?!除隊になっちゃうよ?!」
と、それを見て村田が首を横に振って言うと、不死川も一応それは嫌なのだろう。
舌打ちして刀の柄から手を離した。

こわっ!こっわあぁぁ~~!!!!
と、青ざめる村田。

こんな敵対心ビシバシな相手と二人で任務?
そう思うと、前途多難さに頭を抱えたくなった。



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2 件のコメント :

  1. 誤変換かどうか微妙なんですが「死闘は禁止だよ」←私闘かな?と思ったのでご確認ください<(_ _)>

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    1. ご指摘の通り死闘×、私闘○です。
      ご報告ありがとうございます。修正しました😀

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