うあ…マジ?!なんでっ?!!
とこちらもどこか見覚えのある容貌で村田は目を大きく見開く。
もっとも時期的に錆兎達よりもまだ年下の彼はこんな大人の男ではないから、おそらくこれは前炎柱である彼の父親、煉獄槇寿郎なのだろう。
──もしかして…炎…柱様?じゃあ、碓井さんはやっぱり…
と問えば、碓井は
──なんだ、お前気づいてたのか。すげえな。そうだ、俺は音柱の宇髄天元なっ
とあっさり認めた。
ええーーー?!!!
と、前世で彼らを見知って察していた村田以外の全員が驚いている。
本来新人向けの任務に柱が一人こっそり忍び込んでいて、さらに柱がもう一人待機しているなんて、さすがの錆兎も想像もしていなかったらしい。
え?え?と年相応の子どもらしい驚きの表情を浮かべていて、なんだか可愛らしい。
そんな一同に対しての説明役は、炎柱がするようだ。
「皆、黙っていてすまなかった。
実は今回は将来的に輝利哉様の側近を作ってやりたいというお館様の命で、その候補として元水柱の鱗滝さんの弟子の動きを観察することになっていたんだ。
本当はまだ柱になって間もなくて顔も知れていない宇髄がしばらく一般隊士のふりをして傍で観察。
あとはもう一人その時に手の空いている柱が非常時に近くで待機と言う形で当座見守る予定だったんだが…
まさか最初の任務でいきなり十二鬼月が混じっていたのは想定外だった」
へっ??
柱二人以外全員がその言葉で驚きに目を丸くした。
──…じゅうに…きづき?!!
ぽかんとする錆兎に宇髄が
──なんだ、気づかず踏みつぶしてたのか?
と呆れた顔で言うと、錆兎はこっくりと頷いて
──有無を言わさず全て雑に踏みつぶしたから気づいてませんでした。
と、そこは素直にそう答える。
それを聞いてそのあたりはしっかりしているようでいてもまだ少年だな…と、村田は小さく噴き出した。
宇髄は
──下弦ごとき敵じゃねえってか?派手に大物だな
と言ったあと、
──…ところでなんでいきなり敬語だよ?
と聞いてくる。
──…碓井…いや、宇髄さん、柱なのでさすがに…
と、心底困った顔で答える錆兎。
そりゃあそうだ。
たった今初任務を終えたばかりの新人と鬼殺隊の頂点の柱では立場が違い過ぎる。
本人が良いと言ってもそこで堂々とタメ口をきけるほど図太い神経はさすがにしていないのだろう。
しかしそこで逆に宇髄に
「あ~、お前そういうの気にする系か?
そんならむしろ俺が敬語つかわねえとって立場なんだが?」
と、驚くような発言をした。
「へ?」
とやっぱりぽかんと宇髄を見上げる錆兎。
それに槇寿郎がコホンと一つ咳払い。
「あ~…我々は確かに隊士の頂点ではあるのだが、君が就くのはお館様の補佐兼輝利哉様の将来の側近だ。
これは長く傍で当主の補佐をする人間を置くことで入れ替わりが激しい当主の引継ぎが速やかにできるようにと今回お館様が作ったものでこれまでなかった地位なんだが、とどのつまり、前当主を補佐しながら当主と共に次代の当主を育てるという立場だから、お館様と輝利哉様のすぐ下の地位ということになる。
お館様の体調次第では我々は君から指令を受けることもでてくるだろう。
…ということだな」
無理っ!!!
と、錆兎の顔に書いてある。
そりゃあそうだ。
確かに柱の中で唯一五体満足で引退した元水柱を師匠に頂いているというのは大きいかもしれないが、自分自身は一新人隊士に過ぎない。
何故そんなたいそうなことになったんだ?と本人が一番混乱しているだろう。
「…確かに先生はすごい方ではありますが、俺はまだ本当に未熟な新人隊士なんですが?」
と、なんだか彼にしては随分と必死な顔で訴えた言葉は、
「大丈夫っ!宇髄から今回の任務での君の行動については報告を受けていて、お館様からも今の時点では十分すぎるほど高い能力だとのお言葉を頂いている。
重要なのはお館様亡きあと、輝利哉様を一人にしないこと。
輝利哉様が腹を割って相談できる相手を残すことだから、当座はお館様のもとで色々学びながらでいい。
俺も他の柱も協力をするし、次代ということならうちにも君より1歳下の息子がいて、いずれ俺の跡を継ぐことになるだろうから、息子にもよく言い聞かせておくっ!
一緒に頑張ってお館様と輝利哉様を支えて行こうじゃないかっ!!」
と、煉獄槇寿郎のなんだかテンションの高い説得の言葉に押し流されて行く。
そこで錆兎の視線はちらりと隣の兄弟弟子へ。
ああ、自分の役目が重いというのもそうだが、一気に重くなった身分のせいであのぽやんとした兄弟弟子を一人で任務にやるのは心配なのだろう。
しかしそこはぬかりはない。
「大丈夫だぜっ!補佐のお前の補佐ってことで、お前の大事な姫さんも行動を共にする許可は出てるからっ!
さあ~!これでもう断る材料はねえよなっ?!」
と、宇髄にピシッと逃げ道を塞がれた形で、どうやら錆兎は産屋敷家にドナドナされることになった。
まあ…妥当な人選だよな…と、話が終わったあたりで隠達が駆けつけて色々事後処理をするのを見ながら思う村田。
しかしそこでふと気づいた。
村田は今まで錆兎が生きて居れば錆兎が水柱になるのだろうと何の疑いもなく思っていた。
しかし錆兎は産屋敷家の補佐役ということで柱にはなれない。
では前世で水柱だった義勇が?と思っても、錆兎が居る世界の義勇はお世辞にも戦闘に長けた隊士にはならなさそうだし、何より錆兎の補佐として産屋敷家の直接のお抱えになるらしい。
それなら今生の水柱は誰に?!
前世で知る限りでは、次に可能性がありそうなのは炭治郎あたりだが、彼は結局最後まで階級が甲にはならなかった。
というか、義勇がいなければ彼は隊士になるきっかけがなかったのではないだろうか?
え?え?ええっ?!
一体この先どうなるのっ?!
この数年後、度肝を抜く形でその答えが出ることになるのだが、それはこの時点ではさすがに村田も思いもつかない。
とにかくこうして前世では参加した隊士が全滅したこの作戦は、今生では太田以外犠牲者を出さずにめでたく終了したのだった。
度肝を抜く展開ってもしかして村田さんが水柱?
返信削除なんてワクワクしています!
錆兎はお館様の補佐、義勇はさらにその錆兎の補佐に…なので、あとはお察しということで😅💦
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