村田の人生やり直し中_25_これじゃないっ

…村田…俺は前を歩くから念のため義勇の後ろに立って義勇を挟んでくれ。

奥に進むにつれ、少しずつ錆兎が緊張の度を増していく気がする。
それは最終選別の7日間をずっと彼と密着するように過ごした村田にしかわからない程度ではあるが…。

その錆兎の緊張に村田も進む先に特別に注意を向けていると、なんだか最終選別のあの大鬼に出くわす前以上にぞわりぞわりと嫌な空気を感じる気がした。

それを感じているのは錆兎から指摘をされた村田と義勇…そしてなんだか他よりかなり敏い感じの碓井だけのようである。

太田は3体ほど鬼を斬って、どうやらあと3体で今まで斬った鬼の総計が50体になるらしく、ご機嫌で前を歩いているし、他の4人も今まで出てきた鬼があまり強いとは言えない鬼だったのもあってすっかり油断しているように見えた。


しかし太田が4体目を首を刎ねたあたりで錆兎が義勇の手を放して刀に手をかける。

「村田っ!義勇を頼むっ!!」
と、言った瞬間に、碓井も動いた。

「俺はっ?!」
「後ろをっ!!」
「了解っ!!」
と、錆兎と碓井の二人の間ではそれだけで通じるらしい。

首を刎ねたはずの鬼の爪が太田の目を突き刺して、うおぉぉぉーーーっ?!!!!ともうわけもわからずに顔を押さえて転げまわる太田に、他の4人が悲鳴をあげた。

気づけば何故か首から上が生えてきて元通りの鬼。
まだ転げまわっている太田を見捨てて後ろに逃げ出す4人と、逆に前へ走っていく錆兎。

一度は22で無惨が倒されるまで隊士を続けていい加減慣れたはずの修羅場。
なのに体が恐怖で震えるのは今生ではまだ初めての任務に就いたばかりの未熟な体のせいだろうか…。

1歳年下のはずの錆兎が首を刎ねたはずなのに死なないどころか再度首を生やすなどという前代未聞の鬼に迷いなく向かって行く後ろ姿に彼の身の心配をするよりもまず頼もしいと思ってしまうあたりが、動けないことより情けないと村田は思う。

──壱ノ型 水面斬り!!!
と凛とした声と共に振るわれる刀。

錆兎の日輪刀は振るうと青い刃先がキラキラ光る。
まさにおとぎ話の主人公が使っていそうな不思議な刀だ。

それが暗闇に光を舞い散らせながら鬼の首を刎ねる。

しかしぽぉ~ん!と夜空に首が舞った時に錆兎の口から出た言葉は
──違うっ!これじゃないっ!!!
だ。

村田には正直彼が何を言っているのか全く分からなかったが、碓井はそれに
──それじゃなければ、どこだっ?!
と、まるでその言葉の意味を理解しているように問う。

──落ち着いて探れないっ!!
と、錆兎がそう答えたところを見ると、やはり彼は正確に錆兎の言葉の意味を理解しているのだろう。

錆兎が叫んだところで、
──わかったっ!俺様が派手に時間を稼いでやるから、気合入れて探れっ!!
と、腰からスタっと2本の刀を鞘から抜いて構えた。

うん…やっぱりこれあの人だよね?
百歩譲って同じ戦法とかを受け継いでる極々近い親戚?
とりあえず他人でないことは確かでしょ…。
と、村田は複雑な表情でそれを眺めつつ自分も念のため自衛のために刀を抜く。

何がこれじゃないのかも、何を探るという話になっているのかも全くわかりはしないのだが、とりあえず攻撃の手がこちらへ来たならば、可能な限り防衛しようと思いながら…


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