村田の人生やり直し中_21_不穏な任務と生存戦略

──お前が例の新人かぁっ

村田たちが組み込まれたのは総指揮を任されている太田の班だった。

前回の鬼を全て倒した最終選別でのことは鬼殺隊でも前代未聞だったこともあり、隊中に広まっているらしい。
それを成した新人となれば、良くも悪くも有名になる。

隊に大いに貢献してくれるであろうと歓迎するか、舐められまいと警戒するか…
残念ながら太田は後者だったらしい。

隊に組み込まれるなり錆兎に
「最終選別で少しばかり鬼を斬れたからといって調子に乗るなよ?!
あれは弱い鬼を選んで入れているんだっ!」
と、威圧するように言ってきた。

錆兎の方はそれににこやかに
「それはもちろんわきまえています。
正式な任務に就くのは初めてのことですし、ご指導のほどよろしくお願いします」
と答える。

すると、おそらくかなり身構えていたのだろう、
「わかっているならいいっ。
くれぐれも調子に乗らずに俺の指示に従えよっ?!」
と、気まずそうに咳ばらいをすると、話を切り上げ任務の説明に入った。


3班のうち2班で鬼が村から出ないように警護。
そして自身の班が村に入って鬼の状態を探るという。

え?と村田でもさすがに思った。
新人である同期達はよくわけがわかっていないようだが、新人以外の隊士達はどこか複雑な表情でざわついている。

そこで村田はチラリと錆兎に視線をむけたが錆兎は特に表情を変えることなく、しかし村田が視線を向けたことには気づいているようで、村田にだけ聞こえるような小さな声で、
(…余計なことを言っても無駄にことを荒立てるだけだから、黙っておけ)
と、ささやいてきた。

ああ、違和感は感じているんだな、と、状況はとりあえずきちんと把握しているらしい錆兎にホッとする村田。

確かにあの太田の態度を見た限りでは下の人間が言うことに耳を傾けるような人間ではない。
そうなると、下手なことを言えば感情を逆なでて平静さを無くさせるだけという判断は正しい。

村田は錆兎の言葉でそれを察して黙っていたが、他の班の隊員から
──総指揮の班は指示が出せる位置に下がっていた方がいいんじゃないか?
と、意見が出た。

…が、それを聞いた太田は案の定激昂して

「俺はここで一番強いから総指揮に選ばれたんだっ!!
俺が居れば鬼の殲滅などすぐできるっ!
他は打ち漏らしが村の外に出ないように見張っていればいいんだっ!
総指揮の俺の文句があるやつは今すぐここを去れっ!!」
と、夜道をビシッと指で指す。

…あ~、なるほど。
これで全滅したわけかぁ……
と、村田は前世でこの任務についた隊員が全滅したことを思い出して内心ため息をついた。

おそらく中に居るのは太田の手に負えないレベルの鬼で、まず太田の班が全滅し、村の周辺の警護に当たっていた班の隊士達はそのことを知らずに総指揮からの撤退の合図を待ち続けて全滅したというところだろう。

そうとわかってしまえばある程度は生存戦略はたてられる気がする。
とりあえず太田が倒れた時点で撤退。
これは義勇を盾に錆兎をせっつけばなんとかなる。

その後、残りの2班に総指揮が倒れたことを伝えて撤退をしつつそのことを鎹烏で報告すれば、あとは柱が派遣されてきてなんとかしてくれるだろう。
と、村田がそんなことを考えていると、錆兎がやはり自分の両隣の二人にしか聞こえないような小声で
(…義勇も村田も…非常時が起きたら俺から離れるなよ?
…少なくとも二人くらいなら俺がなんとかするから…)
と言ってくれる。

ああ、こいつが危機感を持っていて最大限の対処を考えてくれているのなら安心だ。
そして…自分たちが生きて村はずれまで撤退できれば、少なくとも同期達は撤退のタイミングがつかめて助かるだろう。

そんな風に思えば、おそらく勝つことは出来ない不穏な任務ではあるが、村田は少し心が軽くなるのを感じた。


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