「今回は新人に経験を積ませろという命も受けている。
だから新人はまんべんなく班に放り込むから、適当に3人組に分かれろ」
全員が揃った頃、この作戦を仕切ることになった太田と言う甲からそんな指示が出た。
その瞬間、義勇は錆兎にしがみつく。
……片手で村田の腕をしっかりつかみながら。
──俺も錆兎と組みたいっ!!
──前回一緒だったんだから今度は譲れよっ!
さすがに錆兎にとって目に見えて特別な相手である兄弟弟子の義勇に関しては皆諦めているようだが、やはり錆兎と一緒に活動してみたい欲はあるらしい。
当たり前に義勇に引きずられて錆兎と3人組になった村田には非難轟々だ。
だが、前世のことを覚えているわけでもないのでおそらく人見知りが強くて慣れた人間と居たいのだろう。
義勇が
──錆兎、俺はもう一人は村田がいい。
と言えば、もうそれは決定事項だ。
錆兎は少し困った顔で同期達をちらりと見た後に、はぁ…と小さく息を吐き出した。
そして改めて皆の方をむいて言う。
「みんな、すまん。
親兄弟を含めた親類縁者、その後に本当の兄弟のように育った兄弟子姉弟子全員を亡くした俺にとって義勇はたった一人残された最後の心の砦なんだ。
村田は前回その義勇を咄嗟の状況で身を挺して自らが身代わりに怪我をして守ってくれてな。
他にもそういう奴がいるかもしれないが、実績がすでにあるやつだと俺が安心するんだ。
俺が気づかない状況で本当に危険になった時に村田が居れば絶対に義勇に怪我を負わせないでくれると心の底から思えるから、俺は安心して前に出られる。
村田に同じ組になって欲しいと言うのは後顧の憂いなく刀を握りたい俺の我儘だ。
もちろん皆が俺と組んでみたいと思ってくれるのはすごく嬉しい。
せっかく一緒に選別を超えた仲だ。
俺も皆のことをもっと知りたいと思っている。
でも今回はそういうわけだからごめんな?
その代わりこの任務が終わったら連絡先を交換して、皆が都合が合う日があれば選別突破祝いも兼ねて同期会でもしよう」
あ~、こいつなんだか上手いなぁ…と、同期会のひとことで沸き立つ同期達を見ながら村田は感嘆のため息をついた。
村田を同行させたいというのは本来錆兎ではなく義勇の意思なのだが、望んでいるのは自分なのだというスタンスで義勇にも村田にも害が行かないように話をする。
そうして同行させたい理由を説明したあと、皆に対する好意と交流を持ちたい旨を伝えて具体的に交流を持つための計画も提案する。
相手の意向をきけなくとも相手に拒絶されたという気持ちを持たせない。
なるほど、本人の話通り、四天王のまとめ役を務めた家系の跡取りだったんだなぁと、村田は改めてそう思った。
その後なんのかんので村田たちを合わせて9人ほどいた同期が3組に分かれると、壬から甲までの隊員18人が6人ずつ3つに分かれた班に組み込まれ、総括をする太田から作戦の内容について語られる。
そうしていよいよ今生での村田の初任務が始まることとなった。
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