村田の人生やり直し中_19_全滅任務

──村田っ!久しいなっ!!

あれから半月。
無事に隊服と日輪刀が届けられたと思ったら、即任務を言い渡された。

錆兎が生き残ったこと…それともあの大鬼が倒されたことで未来が変わったのだろうか。
村田の初任務は前世での初任務となった、結局は鬼の関係ではなく徒労に終わる人さらい関係のものではなく、全体を鬼に占拠されたらしい山間の村の大掛かりな鬼の殲滅任務だった。

確か前世では同期のうち半数くらいがその任務で死んでいる。
…というか、同期だけではなく仕切っていた甲も先輩諸兄も全滅したはずだ。

最終的に柱が二人ほど投入されて解決したはずだが、どうしてそうなったのかとか、詳しい話は聞いていない。
ただ、せっかく最終選別で”彼”が命がけで生かしてくれた同期が最初の任務でもう半数になったというのが衝撃的でひどく悲しかったことしかその任務に関しては覚えていなかった。

だから、どうしよう…適当なところで見切りをつけて撤退を提案して、誰も乗ってくれなかったら一人でも逃げるべきだろうか…などと憂鬱な気持ちで赴いた集合場所。

そこにはなんと笑顔で手を振ってくる錆兎の姿。
それをみて村田は複雑な気持ちになる。

これ…喜ぶべき?それともまた錆兎の生存計画を練らないとと頭を抱えるところ?
と悩みつつ、でも不思議と嬉しい。
彼らとまた一緒に居られて素直に嬉しいと思う自分がいる。


村田が手を振り返しながら駆け寄っていくと、大勢での任務なので新人を慣らさせるためにはもってこいなのだろう。
前世と同じく大勢の同期がいて、嬉しそうに錆兎を囲んでいた。

もちろんその隣には寄り添うように義勇がいる。
漆黒の髪に澄んだ青い大きな目。
肌も透けるように真っ白な愛らしい容姿は相変わらずだ。

最終選別では助けられてすぐ別れたので、その時も錆兎に寄り添っていた義勇をその愛らしい容姿から少女だと思っていたなどという者も少なくはない。

驚きと笑いとに満ち溢れた同期達。
そんな輪の中心にいた錆兎はふと何かに気づいたように
「ちょっとごめんな。俺は村田と話があるから…」
と人波をかき分けて村田の方へと寄ってきた。

え?と村田が少し不思議そうな顔をすると、錆兎は村田の腕を取って同期達から少し離れる。

そうしてなんだか気づかわし気な表情で
──村田…何か悩んでるか困っているか?
と、いきなり村田の顔を覗き込んで言った。

ああ、お前そういうとこだよ。
主人公ってのは大局だけ見て些末なことは周りに任せとくもんだろうよっ!
と、村田がため息をつくと、今度は錆兎の方が不思議そうに
──…主人公?
と、コテンと首をかしげて見せる。

──お前の実家のこととか…師範に聞いたから…
と、それは言うべきかどうか少し迷ったが、錆兎に隠し事をしたくはなくてそう言うと、
──あ~、それか。まあ実家はすごいかもしれんが俺がすごいわけじゃないから気にするな。
と笑うので、それは正解だったらしい。

──悩みは…それじゃないよな?
──うん。
──それなら一応訂正しておく。実家の立場ということなら、主人公は頼光様でうちはその部下のまとめ役であり、上と下の相談役兼橋渡し役だ。
──なるほど。
──…というわけで、安心して相談しろ。何を悩んでいる?

どうやら錆兎は話を聞いてくれる気満々らしい。
村田にしたって自分でどうこうできるレベルのものではないので相談はしたい。
だが、どういえばいいんだろうか…


──今回の任務のことか?何か気になることがあるのか?

おとぎ話の主人公集団のまとめ役の家系を自認するだけあって、相手が言いたいことを察するのが上手すぎる。

「些末なことでも、きちんと理由を説明できないことでも構わないぞ。
あの時お前が咄嗟に自らの身よりも義勇の身を優先してくれたことで、俺はお前を信じると決めた。だからなんでも言え」

そんな風に言われると、話さないという選択肢はない。
村田はどう話すか少し悩みつつも、前世のことだけ省いて、夢…ということでこの任務が認識されているよりもずっと危険で下手をすれば全滅しかねないようなものに思えると打ち明けた。

夢を見たとかでは説得力がないか…と思ったが、錆兎は話を聞くと、ふむ…と考え込む。

「信じてくれるんだ?」
と思わず口にすれば、錆兎は真面目な顔で
「虫の知らせとかは馬鹿にはできないぞ?
ただ新米の身で上に進言すると相手によっては不愉快になられるからな。
まあ俺達の間で撤退の可能性も含めて気をつけていよう」
と言った。

感情を乱すことがなければとんでもなく強い錆兎が撤退を含めて…ということも視野に入れてくれるなら、自分だけで考え込んでいるよりも随分と心強い。

自分が死にたくないというのもあるのだが、同期が半分もここで死ぬことになる未来は断固として避けたいこともあり、村田は自分と錆兎と義勇が参戦と言う前世とはすでに違ってきている今回のこの作戦に、一縷の希望が見えた気がした。


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