…最終選別ということは冨岡にまた会えるんだなぁ……
咲き誇る藤に囲まれた山道を歩きながら、村田はついこの前死に分かれた同期のことを思い出す。
入隊前の見習い時代にはすごく強いと思ったが、今、あの戦いを生き残った自分として見ると、彼はどう映るんだろうか…。
と、色々考えだすと、前回は恐ろしいばかりだった最終選別もなんだか楽しみになってくる。
村田が集合場所の山の中腹までたどり着いた時には、もう半数くらいの少年少女が集まっていて、それぞれに緊張した面持ちで進行&説明役として足を運んでいらっしゃる奥方様に視線を向けていた。
そんな中に一際目立つ浅い黄みがかった赤色の髪。
…あぁ!錆兎だっ!!
と、村田はどこか胸が沸き立つのを感じる。
彼は同期の中ではずっと恩人で英雄で神様だった。
死んだ…と聞いたのは最終選別が終わったあとに係の隠からで実際に自分たちが見たのは華麗に鬼の首を斬り飛ばす彼の見事な剣技だけで負けたところも…ましてや死んだところも見ていなかったので、同期の中には何か事情があって死んだことになっているが、彼は実は生きていて、何か重要な仕事をしているに違いないと信じていた者すらいた。
村田は初期に怪我をした義勇を託されたことで錆兎と彼が同門の弟子で仲が良いことを知っていたので、その義勇の変わり様に錆兎が本当に死んでしまったのだと悟ったのだが……
それでも村田にとっても彼は恩人で特別な少年だし、こんなところで死んで良い人間ではないと常々思っていた。
村田と一緒に暮らすきっかけになったあの口論の日に不死川が言っていたように、錆兎が生きていたらものすごく強い柱になって犠牲者がもっと減ったのかもしれないとも思う。
そして村田が出した結論。
ああ、そうだっ!この最終選別で錆兎の死を回避させればいい!!
もうそれはそれまでいきなり人生を巻き戻って混乱するばかりだった村田の思考が一気にクリアになった瞬間だった。
もしかしてこの巻き戻りはそんな使命を与えられたせい?!
とまで思った。
錆兎を生かして最終選別をクリアさせて、強く立派な隊士になってもらって、無惨戦が終わる時までの鬼殺隊士達の生存率を大幅に上げる!
完璧だっ!!
元々は村田は別に使命に燃えやすいタイプでもないのだが、鬼との戦いは勝ったには勝ったが犠牲者が多すぎた。
その中には仲の良い同期達も多数いたので、できればみんな生きて鬼の居ぬ世界で飲み明かしたい。
そんな思いが平々凡々な男、村田を突き動かした。
こうして人生二度目の最終選別、村田の目標は自身の突破と共に錆兎の生存というもう一つの要素が加わったのである。
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