村田の人生やり直し中_01_プロローグ

ああ…
おそらく自分は良くも悪くも重大な場面に居合わせてしまう男なのだろう…と、村田は思った。


無惨を倒したあとの蝶屋敷は怪我人でいっぱいである。
部屋に余裕がなくて一般隊士は大部屋に雑魚寝状態だ。
それでも皆、唯一余裕のある病室に移るのは断固として拒否をしている。

そう…そこはあの激戦で生き残った数少ない柱。
不死川実弥と冨岡義勇という、現役時代からとても相性の悪いことで知られていた二人の柱が養生しているからである。


必要な時以外、誰も足を踏み入れようとしない禁断の部屋。
その病室のドアは魔界の門とまで言われている。
それでも村田は見舞いの果物籠を持ってその部屋の前に立っていた。

だって嬉しかったのだ。
隊士になって一般隊士で終わった自分と違って柱まで上り詰めた義勇は自分のことなどすっかり忘れているかと思っていたら忘れてなどいなくて、無惨戦で名を呼んでくれたのだ。

ちゃんと同期の村田だと覚えていてくれたことが他の同期が全員戦死してしまった身としては嬉しい以上に心に染み入るものがある。

だから彼が自分を記憶していてくれた以上に、自分は彼を記憶しておこうと思った。
戦いの後遺症で柱は共にあと4年は生きられないらしい。
ならばその残り短い時間は極力彼を見て、そのうち時間の波の中で皆が忘れてしまった後も自分だけは最後に残った唯一の同期で人間の平和を取り戻すのに大いに貢献した彼を覚えておこうと心に決めて、とりあえずまずは見舞いにと足を運んだわけである。


しかしなんだかタイミングが悪かったらしい。
ノックをしようと手を挙げた瞬間、怒鳴り声が聞こえてきた。

しかも驚いたことにそれはいつも怒鳴っている不死川のものではなく、普段どれだけ不死川に罵られようと殴られようと穏やかに返していた義勇のもので、村田は驚いて固まってしまう。

しかしなんとなくその理由はわかる気がした。
そう、今ではおそらく村田以外はわからぬその理由。

義勇の怒声は
──錆兎をバカにするなっ!!お前なんかに馬鹿にされていい剣士じゃないっ!!!
だったから……


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