ファンタスティックタイム_6_ある日の放送

最初はお悩み相談と違って質問コーナーは質問されたことを端的に答えていた二人だったが、ある回から錆兎は好きな理由とか、その質問の答えに関して言葉を色々添えるようになっていった。

そんな日々が少し続いたある日の番組へのメッセージ。

「こんばんは。
水柱のファンタスティックタイム、毎週楽しみに聴いています。
私は高校生で月曜から土曜まで学校があって、唯一の休日の日曜日が過ぎるとまた6日間学校かと思って憂鬱なのですが、月曜日の夜8時のお二人の配信が始まってから、あんなに嫌だった月曜日が楽しみになりました。
ありがとうございます。
特に最近の質問のコーナーで、錆兎君が質問の答えだけじゃなくて、それにまつわる色々なことを話してくれるのがとても楽しいです。
お二人のことが大好きなので、普通のドラマや歌番組と違って二人自身について色々聞けるから、この番組は本当に本当に大好きなんです。
だからずっとずっと続けてくれると嬉しいです」

メッセージを読み上げて、ニコリと笑みを浮かべる錆兎。
そしてニコニコと同じく笑みを浮かべつつ、
「質問コーナーで錆兎がよくしゃべるようになったのは、モブ子の言葉の影響だよね」
と、やっぱりプライバシーとか情報リテラシーという言葉がどうも脳内に定着しないで相変わらずモブ子の名を出してしまう義勇。

モブ子本人は義勇のやることなら自分に対する範囲なら全て許すという人間なので気にしないが、錆兎は色々に巻き込んでしまうであろう未来に思いを寄せて、申し訳なさにため息がこぼれてしまう。

それでもそこは状況を言及して少しでも被害を少なくしなければならない。
…ということで、錆兎は何でもないことのようにその話を引き継ぐことにした。

「元々はお前が『質問コーナーってなんのためにあるんだろう?俺が数学が好きでも音楽が好きでもあんまり他には意味がなくないか?』って言ったのが発端だろう。
それでモブ子が『ファンは推しのことは何でも知りたいんだよ。知ることが楽しいの。そこにそれ以上の意味なんてないの。推しが数学が好きと言えば、自分が数学嫌いでも数学の授業でここで推しなら楽しく授業受けるんだろうなぁとか想像すると楽しくなったりするんだよ』とか言ってて…。
俺はそれで今までは質問コーナーって仕事で聞かれるから答えてただけなんだけど、俺達のことを知ることでリスナーの皆が楽しいなら、少し多めに答えれば皆その分楽しんでくれるかと思って色々話すことにしたんだ。
俺は芸能界のこととかは先輩である姉の真菰になんでも教えてもらえるけど、そういうリスナーやファンの皆の気持ちとかって聞く場所がないからな。
有名になる前からいつも義勇と居たから逆にそれ以上に深い話をできる友人とか作ろうと思っていなかったし。
モブ子とMくらいだから…芸能人として認知される前からの親しい友人は。
クラスの友人達もいい奴ばかりだけど、やっぱり多かれ少なかれ見る目が”芸能人の錆兎”になってしまうしな。
まったくそのあたりを意識も認識もしていなかった年齢からの親しい友人はそのあたり気にせず言いにくいこともズケズケ言ってくれるし、貴重だよな」
と、彼らは別に特別な関係ではなく関係としては飽くまで友人だが、芸能人として活躍する前からの友人なので友人として特別なのだと主張しておく。

「…というか…義勇があんまりモブ子モブ子言うから、俺ももう少しMのことを話した方がいいのかもとか、錯覚しそうになってくる」
と、さらに続けると、義勇がそこで今度は
「いつも気になってたんだけど…錆兎はなんで番組だと村田のことをMって言うんだ?」
と、そんな錆兎の心配を全く理解していなかったのがまるわかりの発言をしてきて、錆兎はとうとう両手で顔を覆って天井を仰いだ。


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