「あ~…本当は副社長からお前が家出したようなことを聞いて、わずかばかりの現金しか持って行っていないということだったから、必要なら手助けをと思って連絡したわけなんだが…お前の現状聞く前に俺に何でも遠慮なく言ってもらえるよう、俺の現状を話しておくな?」
そうなった時に弟が遠慮なく頼れるように、炭治郎が考えているのとは違い今の自分が幸せに暮らしているのだと教えてやった方がいい。
そう判断して錆兎は
「少し話は長くなるが、今時間は大丈夫か?」
と聞くと、炭治郎は大丈夫!と即答したので、錆兎は先に心配そうに錆兎に視線を向けている愛妻に
──あ~弟だ。なんだか家出中らしいから話を聞いてる。
と言って、心配しないようにと頭をなでる。
そのうえでまた電話の向こうの炭治郎に向き合うことにした。
「まずな、結論から言うと、副社長に持ってこられた見合い話で結婚した嫁な、死ぬほど可愛い。
自分で言うのもなんだが溺愛中だ。
跡取りの件については、むしろ会社を背負っていない分時間が取れるから、その分愛妻と楽しく過ごせるし、結果論だが俺としては副社長の諸々のおかげで今とても幸せに暮らしている。
強いて言うなら…嫁の実家が父親vs長兄でのお家騒動の真っ最中なのが心配事と言えば心配事か。
でも巻き込ませたくないから外出を控える分のびのびと過ごせるように、広めの一軒家を購入して明日引っ越す予定なんだ。
ということでお陰様で私生活はすごく充実しているぞ。
会社を退社したことについてはお前も知ってると思うが学生時代からの親友の宇髄の父が急死して宇髄が継いだんだが、なにしろ突然だったから諸々大変でヤバいみたいだからな。
見捨てられないだろう?
だから親父と副社長に事情を話して円満退社という形で退社して宇髄を助けることにしたんだ。
だからお前が俺に引け目を感じるようなことは何もない。
今まで通り気の置けない家族としてなんでも言ってこい」
まあ…義勇の腹の子については念のため現段階では隠したが、言っていないことはあっても嘘はついていない。
──本当に…?
と、炭治郎は恐る恐ると言った風に聞いてくる。
それに
「もちろん本当だ。
嫁とは普通の新婚夫婦以上に円満で、デートだって普通にしているし、籍を入れた最初の夏に別荘に長期バカンスも行ってるし、今も隣で俺がいれた蜂蜜入りのホットミルク飲みながらクッキーかじってるぞ。
正直、嫁に関しては副社長に感謝してやってもいいと思っているくらいだ。
あと、会社の件は宇髄か実弥に聞けば確認取れるぞ?」
と見えないのは承知で大きく頷きながらこたえると、そうかぁ…良かった……と電話の向こうから大きなため息が聞こえてきた。
とりあえずこれで炭治郎に対して一切の恨みつらみはないと分かってもらったところで、錆兎は本題に入ることにする。
「…というわけで、だ、お前の方の事情を聞いてもいいか?」
と、ようやく本題に入ろうとする錆兎のその言葉で炭治郎の口から出た言葉は、あまりに意外なものだった。
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