政略結婚で始まる愛の話_48_波乱の幕開け1

通常の女生と違って前回の生理から…という割り出し方は出来ないが、一度しか行為に及んでいないので、週数はすぐわかる。

Xdayから1ヶ月強。
ゆえにだいたい今2ヶ月強と考えればいいだろう。
ということは、出産まであと8ヶ月弱なので、少し早めに施設は用意したい。

新しく作るのがいいのか、金で買い取るのがいいのか…。
そのあたりはもう錆兎にはわからないので、とりあえず数千万ほど慎一に渡して、丸投げさせてもらうことにした。



それと同時に家を探す。
こちらはダイニングとリビングを除くと2部屋しかない今のマンションでは子どもが育ったら手狭だろうというだけなので急がない。

が、亡くなった義勇の母親に執着しているがゆえに義勇にまで犯罪まがいのことをしてまで執着している義勇の戸籍上の父親や、弟が財閥を継ぐために障害になりそうなものをすべて排斥したいがゆえに錆兎に子どもができないようにしたい副社長など、色々厄介な人物達が何をしてくるかわからないのもあり、セキュリティだけはしっかりしたものを購入したい。

あとは…こちらは楽しいベビー用品選び。
まだ性別はわからないが、とりあえず白やクリーム色ならどちらでも大丈夫だろう。
赤ん坊のものは見てて楽しい。
義勇が最近家で編んでいる赤ん坊用のミトンやら靴下なんか本当に小さくて可愛らしすぎだと思う。

子どもが腹にいることは慎一が手配した医者の見立ではっきりした。
そして錆兎がそのことを歓迎していることを知ると、驚いたことに義勇は全く動揺をしなくなった。

普通なら男に生まれていきなり子どもが出来たと言われれば動揺すると思うのだが、義勇は屋敷に閉じ込められるように育ったため、そのあたりの意識が他に比べて薄いらしい。

そう言えば同性である錆兎との結婚ということに関しても、錆兎の方に疎まれやしないかという心配はやたらしていたが、自分の側に拒絶感があるような様子は一切なかった。

相変わらず一部を除いた食べ物の匂いがだめになっているので、一緒にしていた食事の支度も錆兎1人でしているのだが、その間、リビングのソファで楽しげに生まれてくる子のために編み物をしている義勇を見ると、実は性別の意識というのは、後天的な教育の賜物なのかもな…と、錆兎は思った。

男でも義勇は可愛い。
同性である義勇の腹に子が居ることに関しても、全く違和感を感じない。
そこにはただ、伴侶とその腹に自らの血を分けた子という家族がいる、それだけである。


こうして静かに穏やかに時が流れていく。

マンションのセキュリティは完璧で義勇の身の安全は確保されているし、義勇自身のメンタルも落ち着いてきた。
生まれてくるための医療関係の準備は慎一がすべて滞りなく手配してくれるし、たまには気晴らしにと親友たちが訪ねてきて錆兎と義勇の緊張をほぐしてくれる。

すべてが順調だ…
そう思っていたが、当然その平穏は続かない。
波風の予兆が一つ…錆兎の携帯に届いた。

知らないメルアド。
しかし差出人は名乗っているのでわかる。

冨岡拓郎……義勇の戸籍上の父親である。


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