政略結婚で始まる愛の話_43_驚愕の事実2

「にんしん…けんさ……やく???」

もうなにをどこかから突っ込んでいいのかわからない。
だってありえない。
自分は男だ。

「あの…俺…嫁って言われてるけど、一応は男……」
「知ってる」

とりあえず前提としてありえないと間違いを指摘しておこうと思ったのだが、あっさりとそう返されて、義勇は途方にくれた。

「えっとな…なんつーかな…俺は自分言うのもなんだがすげえ情報通でな。
古今東西のありえねえ話ってのが色々耳に入ってくんだわ。
んでな、昔からいくつかの組織や会社で男体妊娠ってのが研究されてきたのも知ってて、最近だとお前さんの親父の会社でも極秘に力を入れてたってのも聞いてたんだよ。
成功したら大騒ぎな技術だし?まさか秘密裏に完成しているとか思ってもみなかったんだが…。
これまで錆兎から聞いてきたお前さんの環境とか今の状況とかを総合的に考えて、もしや?と思って、たまたま知り合いに買っといてくれって言われて渡すの忘れてた検査薬が手元にあったから、使ってみてたんだが……」



──宇髄の発想はすごく突飛に見えて、実は綿密なデータを元にはじき出されてるんだ…

そう言えば錆兎が以前そんなことを言っていたが、突飛すぎだろうと義勇は思う。
だってありえなさすぎるだろう…

もうその言っていることの無茶苦茶さに気を取られていた義勇だが、続く宇髄の言葉に真っ青になることになる。

「まあ…信じられねえことではあるんだが、これ、陽性ってことはそういうことだよな。
でもってだ、腹にに赤ん坊がいるっつ~ことは、1人じゃできねえし、錆兎の子だよな?
てことは…やっぱり錆兎と相談しねえとだめなやつだな」


そうだっ!!それだっ!!!

「ダメだっ!!錆兎には言わないでっ!!!」

もう信じられないが本当に子どもができているとしたら、絶対に錆兎に知られるわけにはいかない。
だって、”子どもが出来ない”ということが、これといって取り柄もない義勇が錆兎のように完璧な人間の伴侶に選ばれた理由なのだ。

ありえない。
ありえないことなのだが、万が一にでも本当に子どもが出来たなんてことになったら、そばにいられなくなってしまう。

そんなの嫌だっ!!
嫌だ、嫌だっ、嫌だっっ!!!


「言わないでっ!!頼むからっ!!!」
必死にすがる義勇に、それまで黙って聞いていた実弥が
「このままってわけにもいかねえし、錆兎の子なら錆兎だって知る権利はあるだろうがァ」
と、やや戸惑い気味に言う。

「ダメだっ!万が一にでも子どもできたらダメなんだってっ!!!」
パニックのあまり空気がうまく吸えなくてクラクラしてくる。

「ちょ、落ち着けぇっ」
と言う実弥の声がなんだか遠い。

息苦しくて、音がなんだか遠くて、まるで水の中にでもいるような感覚だ。
もがいてもがいて…苦しくて、悲しくて…遠い錆兎の幻に必死に手を伸ばしたところで義勇の意識は途切れていった。




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