政略結婚で始まる愛の話_29_楽しい別荘計画

結局、義勇の言葉通りだとすると、やはりおかしいのは父親で、長兄は義勇を厄介払いしようとしたわけではなく、父親の手から逃がそうとした信用のおける人物らしい。

まあ、8歳も年上の見知らぬ男との婚姻という方法もいかがなものかと錆兎自身も思わなくはないのだが、義勇いわく、長兄は錆兎のひととなりもかなり吟味しての選択だったとのこと。
光栄ではあるが、やっぱり長兄は正しかったと、目の前で可愛い嫁に目をきらきらさせて言われると、少しおもはゆい。

まあそれはさておき、父親だ。
実の息子を誘拐してまでなにがしたい?
胸をつけてナニを切っても、女になるのは外見上だけだ。
ましてや義勇の母親本人になれるわけでもない。

それで良いのか?
みかけだけ一緒にすれば満足なのか?
どうせみかけだけなら服とパッドで十分じゃないか?

確かに義勇は可愛い。
最初はその容姿の可愛らしさに惹かれたが、今は中身も全部ひっくるめて愛している。
だからよしんば義勇が成長しても自分よりもガチムキになっても好きでいる自信はある。

現に弟だって幼い頃は年の差があったので小さくて頼りない感じがとても愛らしいと思っていたが、それなりに育った今だって弟は弟であるがゆえに可愛い。

義勇だっておそらく同じだ。
妹弟とか子どもとかその手の相手はそういうものではないのだろうか。

存在そのものが可愛い。
そのまま大きくならなくても可愛いが、大きくなったら大きくなったでその成長が喜ばしくも誇らしい。

それを母親の面影を求めて無理やりあるべき姿をゆがめて手術とか、頭がわいているんじゃないかと錆兎は思った。

今の義勇が可愛いと思うなら、今の義勇は今の時期に堪能すればいい。
…もちろん、本人が嫌がらないレベルで……

…ということで、まだ少年期で中性的な容姿の今しか楽しめない花嫁衣裳だ。
別荘の家具も可愛い新婚風に変えてしまえ!



「義勇的にもオヤジさんはやばい人なんだよな?
まあ大人の体格に育つまで長くてあと3,4年くらいか。
それくらいは1人で外でないように用心しつつ、でも、今の時期だからこそ楽しめるようなことを片っ端からしていこうな。
義勇が嫌じゃなければ、別荘で新婚ごっことか。
ときがたって落ち着いた部屋にしたくなったらまた変えればいいし、今はおもいきりファンシーな家具で埋め尽くすか~。
一緒に選ぶぞっ!」

面倒な実家でごめん…と、肩を落とす義勇がこれ以上落ち込む前にと、ことさら明るい調子でそう言ってやれば、すぐ、ぱあぁ~っと明るい顔になるのが、子どもらしくて可愛い。

とりあえず自宅で仕事をするという前提で、1週間後から1ヶ月ほど別荘に行く時間を取れたので、食後に2人で一緒に選ぶことにした。


レースやフリルのカーテンに、猫脚の家具。
絨毯も淡い色合いにして、白いソファの上にはフリル付きのハート型のクッションまで置いてしまう。

もちろんベッドは淡いピンクで天蓋付きだっ!

もういっそのことおもいきり少女趣味に走ってみようと、なんだか二人して面白半分でノリノリで選んだら、なかなかすごいことになった。

普通は勇気がでなくてとてもではないができないところだが、そこを開き直って楽しんでしまえば色々がぶっ飛ぶ勢いの部屋が出来て、二人してテンションがあがる。

もちろん、選んだものは金にあかせて業者に指定した通りに設置させることにしたので、1週間後には、新婚ごっこをおもいきり楽しめるはずだ。

しばらくこちらの家を空ける報告がてら、親友たちにも状況がもう少し分かるまで別荘を模様替えして過ごすことを報告。
こうしておけばそのうち遊びにくらい来るかもしれないし、そのときには義勇を紹介しよう!

そんな風に義勇の趣味半分と、二人しての悪ノリ半分で作った部屋は、錆兎1人なら絶対に作ることはないたぐいのものだが、義勇がとても楽しそうだし、たまにはこういうのも良いと思う。

錆兎はあまり浪費家ではないので、こういう使い方はあまりしたことがないし、おそらく内装全部、今回だけで元にもどすことになるだろうが、まあこういう金の使い方も悪くはない。

少なくとも無駄遣いではない。
大切な嫁の笑顔のために使う金は無駄使いではないのである。


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