政略結婚で始まる愛の話_28_家族像2

「俺な、義勇だけが母親が違うときいてたから、てっきり母親や兄貴達と折り合いが悪いものだとばかり思ってたんだが、違うらしいな。
長兄にしか会っていないが、わりと普通に良い兄のようで驚いた」

錆兎はまず自分が勝手に持っていた印象と実際に慎一に会って話した印象から口にしてみた。
それに対して義勇はこっくんと首をたてにふる。

「慎一兄さんは仕事が忙しくてあまり家にいなかったけど、いつも俺を含めて家族全体のことを考えてくれているし、かあさまと下の2人の兄さんたちは、とうさんがおかしくなってからはいつも一緒にいてくれた」

「おかしくって…義勇に義勇の母親の姿重ねたってアレか?」
「うん。11歳の時、普段は家に帰ってこなかったとうさんがいきなり帰ってくることになったんだ。
で、下の兄さんにふざけてワンピース着せられたんだけど、それ見てスイッチはいっちゃったみたいで……」

「あ~…なるほど。
でもワンピースって…それまでは結構意地悪されてたり?」

「いや?あまり構われなかったな。
たぶん今にして思えば、愛人の子だからってよりも男兄弟で男だらけだったから、興味がなかったんだと思う。
2番めの兄さんは妹がほしかったって言ってて、俺がまだ小さくて男っぽくなかったから、たまには可愛い服着せて妹ごっこさせたい感じだったし、かあさまにいたっては、とうさんから俺を隔離するとなった時に、自分の部屋ではふりふりの服とか着せたがって着せてたし」

なるほど…男兄弟だらけで可愛い顔の末っ子というと、なんだかあるあるな気がしてきた。

「まあ…確かに義勇可愛い顔をしているからな。
おふくろさんや兄達の気持ちはわかる。
俺も男兄弟だし。
弟は兄から見れば弟としては可愛いが容姿は一般的には普通の少年だったから、可愛い服を着せたいとかはなかったが、義勇みたいに可愛い顔していたら、着せてみたいくらいは思ったかもしれないな…。
本人は嫌だろうし、そういうつもりなくても嫌がらせになってしまうから、実際に着せはしないが」

まあ…小さくて色々よくわからない頃なら、こっそり着せてこっそり写真くらいは撮って、こっそり携帯の待ち受けにくらいはするかもしれないが……と、これは引かれたくはないので心のなかでのみつぶやいたのだが、驚いたことに、義勇は

「別に…それでかあさまや兄さんが楽しいなら良いんだけどな。
俺も……フリルとかレースとか…可愛いものを見るの、嫌いじゃないし…」
と、最後は少し恥ずかしそうにボソボソっとこぼす。

へ??

「いや…じゃないのか?!」
と、驚いて返すと、慌てて
「べ、別に自分が着たいとかじゃないけどっ!!
似合うとかじゃないのもわかってるけどっ、単に可愛い服自体を見るのが楽しいっていう気持ちはわかるから、嫌じゃないだけでっっ」
と、真っ赤になって言うが、錆兎はそのあたりは半分くらい聞いてない。

「じゃあ、俺がみたいって言ったら着てくれるかっ?!
可愛い格好をした義勇が見てみたいっ!!」
と、思わずおもいきり身を乗り出すと、
「…似合うわけじゃないけど…」
と、こてんと小首をかしげながら、それでも了承してくれる。

「よぉおっし!!!」
思わずガッツポーズ!

いや、別に普通の服装でも可愛いには可愛いのだが、錆兎の大切なお嫁さまはあまりに可愛い容姿をしているので、可愛い格好をさせてみたい。

「どうせならウェディングドレスか白無垢あたりを着てみようっ!!
義勇の父親のこととかあるから公にはできないが、どうせなら1週間ほど休みとって高原の別荘に行って、そこで着て記念写真撮るぞっ!!」

もうテンション上がりまくり、夢が広がりまくりである。
最初は錆兎の勢いにびっくりしていた義勇も、休みをとって別荘に旅行と聞いてはしゃぎ始める。

というわけで、なにも解決をしたわけではないのだが、とりあえずいったん実家関係からは距離を置き、仕事は自宅でするということで別荘へ避難。
そこで情報を集めてきちんとした対策を練ろうと、錆兎は再度副社長にメールを送ったのだった。


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