政略結婚で始まる愛の話_30_新婚ごっこ1

こうして1週間後…二人して楽しく選んだ家具が設置されているはずの別荘にわくわくしながらGO!することにする。

もちろん2人でノリノリで選んだおもいきり少女趣味な可愛らしい服の数々もクローゼットの中にしまわれているはずだし、ウェディングドレスだって衣装部屋に置かれたマネキンにしっかり着せられているはずだし、広い庭の一部に急遽作った小さな日本風庭園に建てた離れの和室の衣紋掛けには白無垢がかけられているはずだ。

しかも造ったのはそれだけではない。

さすがに外に出るのはいかがなものかと思うので、せっかくウェディングドレスを着るのなら…と、天井も高く広めのサンルームの窓にステンドグラス風のシートを貼って、祭壇っぽいテーブルと彫像を置いて、聖堂っぽくしてみたので、そこで2人で式もどきをしてみても楽しいかもしれない。

はっきり言ってはっちゃけている。
おそらく本当の女性と結婚していても、こんな遊びをしようとは思わなかったのではないだろうか。
義勇とだから楽しい。

まあ、義勇が完全に大人に成長してしまう前の今の時期限定の楽しみというのも互いに思っているところではあるだろう。
話が出てからの1週間、義勇もすごく楽しそうで、新婚ごっこで着る用に買って向こうに届けてもらうことになっている服の何着かと同じものを、義母にもらったといって大切にしているティディベア用に作っている。


「おそろいの服着たティディ持ってたら可愛いかなと…。
できれば写真を撮って母様に送ってあげたいんだ。
こういうのすごく好きな人だから」
と、嬉しそうな笑顔が可愛い。

確かにこんな風な言葉が出てくるあたり、血のつながりはなくとも義勇の継母はずいぶんと義勇を慈しんで育ててきたのだろう。

まあそれはおいておいて、確かに可愛いドレスとかを着せたら可愛いかもしれないが、こうやって普通の服を着ていても、鼻歌交じりにチクチクと縫い物をしているだけで、義勇は可愛い。
そう思うと錆兎は、こいつの父親も馬鹿だよな…と、思った。

義勇の実母がどれだけ美人かは義勇を見ていれば分かる気はするが、子どもとしての義勇だって十分可愛いじゃないか。
こんな可愛い子どもを普通に堪能できる立場だったのに、その機会を失うような行動を取るのは本当に馬鹿だと思う。

現に今の錆兎にとっては義勇は配偶者というよりは小さな弟か子どものような存在だが、それで十分幸せだ。
配偶者でも弟でもなんでもいい…
このままずっと一緒に暮らしたいと思う。


こうして2人は車で3時間ほどの高原の別荘に出発した。

荷物はほとんど身の回りの洗面用具くらいで、着替えは全部下着まで新調したので要らず、あとは荷物と言えるのは錆兎のPCくらいだろうか。

なのでトランクはほとんど空で、後部座席にも片方には錆兎のPCバッグで、片方の後部座席にはいつも義勇がかかえている少し大きめのティディが普段着を着て、シートベルトまでつけて鎮座している。

天気も2人の気分にふさわしく快晴で、平日の午前中だけあって道路もすいていて、気持ちいいくらいだ。


錆兎は義勇と一緒にはしゃいで見せながらも、折々周りを確認して怪しい車がいないかを警戒しているが、特に尾けられている様子もなく、道々は順調だ。

あれから動きがないのが少し気になるが、義勇の父親も普通に仕事をしているどころか、会社の経営者なのだから、忙しいのも当たり前かもしれない。

一応今回の別荘に行くことについては、親友2人と副社長、それに慎一にしか言っていないので、尾けられていないとすれば、平和な日々になるだろう。


そうしてなんのトラブルもなく、車は高原の別荘へ。

管理人がきちんと仕事をしていてくれたらしい。
建物が綺麗な状態なのももちろんのこと、庭木もきちんと管理されている。

正面からは対してすごくはないが裏庭はかなり綺麗なフラワーガーデンになっていて、サンルームからの眺めはなかなかのものなので、植物が好きだという義勇が喜んでくれるかもしれない。

「さあ、2人の新居に到着だ。
おもいきり新婚家庭ゴッコをするぞっ!!」
と、駐車場に車を停め、助手席に回ってドアを開けて義勇を助け下ろすと、錆兎は高らかに宣言をして、そのまま少年をかかえあげて別荘の玄関へと向かった。



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