政略結婚で始まる愛の話_19_初デートは危険がいっぱい1

初喧嘩もどきをして、嫁が体調を崩している間、錆兎は仕事を休んで看病をしながら色々調べまくっていた。
なにをか…と言うと、”デートコース”を、だ。

錆兎的には義勇にはすでに、大恋愛の末結ばれたくらいの思い入れを持っていて、自他共に甘いとはいい難い性格の自分としてはありえないほど嫁を可愛がり倒していた。
だが嫁は錆兎が自分に甘いというのはさすがに認識はしているらしいものの、それは政略的なものから来ていると思っている気がする。

だから少しの否定とは言えないほどの否定の言葉でも、”家同士の間でうまくやっていかなければならないのに、失敗をしてしまったと、ひどく思いつめた。

そうじゃない。
家は関係なく嫁が可愛いのだ、と、錆兎としては義勇にわかってほしい。
嫁が愛しいから優しくしてやりたいのだ。
家同士の政略的な関係なら、もっとビジネスライクにしている。

しかしそれを口にするのも何か義勇を追い詰める気がして、どうしたら普通のカップルのように思ってもらえるかと考えた末に思いついたのが、嫁とのデートだった。

考えてみればもう1ヶ月以上たつのに、一度もデートらしきことをしたことがない。

平日は錆兎は仕事に行っていて時間がないし、休日は車でスーパーに買い物に行ったり料理を教えたりと、日常の延長のようなことをしながら過ごしていた。

錆兎は嫁が隣にいればそれだけで楽しかったが、やっていることを考えれば家事の一環で、娯楽のための外出ではない。
コレではダメだ。

確かに入籍を一番先にしてしまった時点で、色々順番が狂ってしまってはいるが、いまからだって遅くはない。
本来は入籍する前にやるべきなのであろう手順を踏まなければ…と、生真面目な錆兎は今更ながらに思ったのだった。


嫁が熱を出したのが火曜日の夜のこと。
水曜日から金曜日は有給をとってある。
土日を挟んで来週の月曜日には出社予定なので、Xdayはなるべく時間をおいて日曜日か…

(…定番は映画だなっ!)
と、まずは車で行ける範囲でなるべく小綺麗な映画館の上映時間を調べる。

嫁の趣味からすると恋愛ものか動物もの、あるいはファンタジーだろう。
なるべく自分も楽しめるようにと、結局ファンタジー系の冒険活劇を選んで、ショッピングモール内の映画館の午前中の指定券をとった。

その後は食事。
昼時だから、こちらも予約。
それからは義勇が好きそうなファンシーショップやらティディ専門店などを回って、最後に美味しいパンとデリで何か買って帰宅すれば良いか…。
少しゆったり目のスケジュールだが、病み上がりの病人なわけだから、あまり無理をさせないほうがいいだろう。

その日用の服も用意して準備万端。
あとは義勇が回復するのを待つばかりである。

義勇のため…といいつつも、錆兎自身もその日をとても楽しみにしていた。
金曜日に、体調が良くなってたら日曜日に一緒に映画に行こうと誘うと、可愛い可愛いお嫁さまは生まれて初めてだという映画館に大きな目をキラキラさせて喜んでくれた。
ああ、計画たてて良かったなと、錆兎も嬉しくなる。
ただただ楽しみなだけの日々。

しかしその当日、その初デートには思わぬ波乱がついてくることになるのを、2人はまだ知らない。


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