2年ぶり…そう、2年ぶりの再会だ。
当時は禰豆子も12の少女で子どものように見えていたかもしれないが、今では14、お年頃の娘だ。
まあ…相手は妻子持ちなわけだから、それがどうこうというわけではないが、あの人の奥方様と比べてあまりに見劣りがしているように見られたくないという複雑な乙女心である。
その日は朝からソワソワと落ち着かなくて、おそらく匂いで気づいているであろう兄に少し心配な視線を送られ、大丈夫よ、と、笑って見せた。
そう、単に会いたいだけ。
そして少しでも綺麗になったなと思ってもらえればそれだけで嬉しい。
あの日初めて買ってもらった髪留めは修行の時以外はずっとしていてだいぶくたびれてしまっていたが、それでも禰豆子の中では唯一にして最高のオシャレ装備だった。
綺麗に梳かした髪にそれを付け、裏庭でとれた野菜や先生が獲ってきた猪などでご馳走を作って待つ。
先生と兄は外で待つというので、禰豆子はいつでも食事にできるように室内で。
やがてにぎやかな声に誘われるように外に飛び出た六太が
「姉ちゃんっ!錆兎さんが縮んだっ!!」
と、叫びながら部屋に戻ってきた。
え??
禰豆子はその言葉に驚いて外に飛び出ようとするが、それよりも早く兄の炭治郎が二人の錆兎の手をひいて部屋に入ってくる。
え?ええ??
確かに錆兎にそっくりな幼児だ。
それも二人。
宍色の髪も藤色の瞳もそっくり同じで、ただ、小さいのと右頬の傷がないのだけが違う。
「そっくりで驚いただろう、禰豆子。
錆兎さんのお子さんたちだ」
と、ぽか~んと立ち尽くす禰豆子に兄が笑って言う。
その言葉に兄の左右にいる子どもが
「渡辺頼光です」
「右近です」
「「お世話になります」」
と、ハキハキとなんとも愛らしい笑みを浮かべて挨拶をしてきた。
「はい…あ、私、竈門禰豆子と申します。
お父様に以前助けて頂いた者です」
と、ぺこ~っとこちらも頭を下げると、父が助けたという言葉が嬉しかったのだろう。
「「父上はやっぱりお強いんだな」」
と双子は顔を見合わせて笑みを浮かべた。
錆兎とその奥方の子どもを拝見するのは少しばかり複雑な気持ちになるものかと思っていたが、双子は見事に錆兎にそっくりで、愛らしさ、愛おしさしか感じない。
子どもが来るということは聞いていたので、おやつにとふかした芋を用意していたのだが、手を洗った後、居間に勧められるままきちんと正座をして待っていた二人は、
「ありがとうございます。いただきます」
と実に行儀よく礼を言って食べ始める。
さすが良いおうちのご子息は幼いのに躾も行き届いているものだ、と禰豆子は感心した。
むしろ一緒に芋を食べている六太の方が2歳も年上のはずなのによほど子どものようである。
そうしてしばらく子どもたちが芋を食べているのを眺めていると、
「お、良い物食べてるな」
と、入口の方から忘れもしない耳心地の良い声が聞こえてきた。
(ああ…本物だぁ…)
と、禰豆子は感動する。
いや、別に子どもたちは可愛いし偽者とかいうわけではないけれど…やはり大人の錆兎はカッコいい。
2年経っても変わらない。
堂々としていて頼もしさにあふれていて、なんだかキラキラして見える。
その錆兎の横には、鱗滝先生と花模様の羽織を羽織ったちっちゃな愛らしい女性。
これが…と、禰豆子は思わず凝視をした。
しかし
「こちらが錆兎さんの奥様ですか?」
と聞くと、ピタッと固まって、次の瞬間に噴き出す錆兎と女性。
「あ~、違うよ、私は真菰。
錆兎とその嫁の義勇の姉弟子ね。
嫁はこの子!」
と、まだ一人いたらしい。
錆兎の少し後ろから女性が顔を出した。
そしてぺこ~っと頭を下げる。
ハキハキとした子ども達とは対照的に、どこか態度がおっとりとあどけない感じがする女性。
でもものすごい美人だ。
そんじょそこいらのちょっと可愛い町娘とかとは違う。
絶世のと言ってもいいくらいの綺麗な人である。
(やっぱり錆兎さんくらいの人の嫁ともなれば、このレベルの美女なのかしら…)
と、そんなことを思いながら
「…すごい…美人ですね」
ととりあえず漏らせば、錆兎は
「容姿はな。
でも性格はおっとりしているし、尖ったところがないというか……
なんというか…丸いよな?」
と、笑いながら姉弟子に同意を求める。
同意を求められた方も笑って頷いていて、夫婦の間に一人というような気まずいものもなく3人仲良しのようだ。
それを言うと、あ~、と、姉弟子が言う。
「そういう意味だとね、水柱屋敷はすごく人の出入りが多いから。
同期も実家みたいに立ち寄るしね。
一方で、うちも仕事が忙しい時は他の柱の屋敷に子ども達を預けたりするし、若い世代はわりと付き合いも密だし仲いいんだよ」
そう言ったあとに、それはおいておいて…と、彼女はちらりと錆兎を見上げた。
「ああ、義勇は真菰と一緒に子ども達を見ていてくれ。
先生と俺は炭治郎と禰豆子と話をするから…」
と、両手に抱いていた赤子を二人の女性に一人ずつ渡す。
その子たちも見事なまでに錆兎にそっくりで奥さんの遺伝子はどこへ?と思うほどだ。
ともあれ、自分だけでなく兄もとなると、話は一つだろう。
「じゃ、花子、お茶とかお菓子とかは場所わかるよね?
よろしくね」
と、禰豆子も妹に跡を託して、兄と共に先生の部屋へとついて行った。
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