「こんにちは」
にこやかに挨拶をしてくる男性。
「こっちが拓郎伯父さん。今回泊まらせてもらうペンションの持ち主よ。
場所は離島だからここからは伯父さんの船で向かうから」
真由の言葉に無言で少し頭を下げる男4人。
「ども、お世話になります」
と善逸も頭を下げ、それに続いて女性3名も
「お世話になりま~す!」
と揃って頭をさげた。
善逸は強いらしい良識ある大人の登場に心底ほっとする。
そしてその時、さらに安心材料が追加。
遠くから近づいてくる人影が三つ。
善逸はそれに完全に肩から力を抜いた。
「たんじろぉぉ~!錆兎っ!義勇っ!こっち~!!」
善逸が大きく手を振ると、炭治郎が軽く手を振り返してくる。
そのとたん、善逸の後ろで女性陣の絶叫。
「え?え?うそっ!!あれって会長様じゃないっ?!!!」
「ほんとだっ!!!マジっ?!!!なんでっ?!!!!」
「我妻、なんで会長様と知り合いなのっ?!!!!」
由衣が善逸の襟首をつかんで揺さぶってきた。
「え??何事っ?!!!ちょ、く、苦しいっ!!!」
揺さぶられて目を白黒させる善逸。
確かに錆兎は海陽学園の会長様だが、何故女性陣がそれを知っているのかわからない。
そういえば海陽学園の制服がカッコいいとか大騒ぎをしていたのは何度も聞いているが、女人禁制の学園の…寮生活でほとんど外に出ることのない学生のことまで知っているあたりが恐ろしい。
しかも彼女たちは
「あ、一緒にいるの、生徒会の新人の書記の姫様だよ、姫様っ!!
すごいっ!マジすごいっ!!
どうしようっ!これもう自慢できちゃうよっ!!!」
と、どうやら義勇の事まで知っている様子。
もしかして自分は今回とんでもない人選をしてしまったんだろうか…と、その女性陣の興奮っぷりに恐ろしさで涙目になる善逸。
そんな大興奮で喜ぶ女性陣に思い切り不機嫌な顔の空手部の男3人。
「遅くなって悪い」
と言う錆兎に
「きゃああ~~!!!」
と手を取り合ってはしゃぐ女性陣。
「なんだっ?!」
と、何かあったのかと驚いて女性陣に視線を向ける炭治郎の肩を善逸はポンポンと叩いた。
「ま、気にしないで。こっちは問題じゃないから。無害なはずだから」
とため息をつく善逸に、錆兎はチラリと拓郎の方を見て
「あちらが宿のオーナーか?」
と小声で聞く。
それに善逸がうなづくと、錆兎はとりあえずそちらに足を向けた。
そして
「こんにちは。初めまして。鱗滝錆兎と言います。
今回はお世話になります。よろしくお願いします」
と、拓郎の前に行くと、錆兎はそう言ってお辞儀をし、義勇も隣で──よろしくお願いします。と、ぺこりと頭をさげる。
そんな二人に
「こんにちは。君は随分きちんとしてるんだな。こちらこそ、よろしく」
と、拓郎はにっこり。
そして船の支度もできたのだろう。
「じゃ、揃ったようだし出発しようか」
と拓郎が声をかけた。
Before <<< >>> Next (10月1日0時公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿