少女で人生やり直し中_47_義勇17歳

2月8日、義勇は今生で17歳になった。
前世では柱になった年齢である。

まあそんなのはどうでもいい。
男のままだったとしても錆兎が生きていれば錆兎が柱になったに違いないし、柱の座というものに執着もない。

それより重要なのは、義勇の誕生日から2か月後。
4月8日の灌仏会(お釈迦様の誕生日)…ではなく、錆兎の誕生日だ。


錆兎がこの世に生誕した、一年で一番重要にして素晴らしい日であることは毎年のことではあるのだが、今年は18歳の誕生日ということで、さらに大きな意味がある。

そう、18歳!!
結婚できる年になるのだっ!!

錆兎はよもや忘れていたりはするまいが、やっぱりちゃんと嫁になれるまではドキドキする。


水柱である錆兎は顔も広く柱達との交流も盛んなので、きつねっこ姉妹と呼ばれる義勇達も必然的に交流関係が広くなり、その誕生日ともなれば大勢が祝ってくれるのが常だ。

一人も欠けることなく最終選別を超えた同期たちも普段は全員では会えないものの、水柱の3人のきつねっこ達の誕生日には必ずかけつけてくれるので、それが互いに生存確認をする場になっていて、4年経った今でも誰一人欠けることなく生きていることを喜びあっている。

柱も錆兎が水柱になった頃からだいぶ若返っていて、宇髄と宇髄よりも若干早く岩柱になった悲鳴嶼以外は、当時の柱は誰もいない。
炎柱の煉獄杏寿郎と風柱の不死川と柱を辞したが先日までは花柱の胡蝶カナエがいた。

まあ前世も柱の新旧入れ替わりはこの頃だった気がするが、義勇の記憶が正しければ煉獄が柱になったのはもう少し後だった気がするので、錆兎が関わったことで色々が少しずつ変わったのだろう。

確か前世では胡蝶カナエが亡きあと、胡蝶しのぶが花柱屋敷ごと諸々を引き継いで、彼女が花ではなく蟲の呼吸だったため、花柱屋敷は蟲柱屋敷と名称が変更されたはずだ。

その胡蝶しのぶはと言うと、まだ14歳だがもう甲で、あるいは彼女が柱になるのも前世よりももう少し早まるかもしれない。

このあたりの若い柱やその関係者は水柱の錆兎だけではなく、真菰や義勇の誕生日にも祝いに来てくれる。
特にカナエは真菰とも仲が良いので、何もなくてもちょくちょく遊びに来ていた。


あとは…前世と違って交流が出来たのは、宇髄の嫁たち。
雛鶴、まきを、須磨の3人だ。


こちらは義勇が少女で大人になったら錆兎のお嫁さんになるのだという話を常にしていたのと、錆兎が宇髄と特に仲が良いのもあって引き合わされた形である。

その中でも義勇はしっかり者の雛鶴やまきをに囲まれてちょっとうっかりドジっ子な感じの須磨と仲良しだ。

今日も4人でお祝いに来てくれた席で
「義勇ちゃん、もうすぐお嫁さんですねぇ~~」
と、いきなり抱きしめて飛び跳ねる須磨。

それを
「あんたはぁぁ~~!!!
まず先に言うことやることがあるだろぉーー!!!」
と引きはがしてげんこつを落とすまきをと、そんな二人に構わず
「本日はお誕生日おめでとうございます。
こちらは天元様と私たち3人で選んだお祝いの品でございます」
と、しずしずと贈り物を手に挨拶をする雛鶴。

それを礼を言って受け取って、義勇はさらに怒られてしょぼ~んとしている須磨に
「須磨さん、今度東町に新しく出来た甘味屋さんに一緒に行きませんか?」
と声をかけ、
「うんうん!美味しいって評判ですよねっ!ぜひぜひーー!!」
と、やっぱりぴょんぴょん飛び跳ねる須磨と手を取り合った。


そんなこんなで日中は大騒ぎで、夜は本来は鬼狩りの仕事だが、今日は義勇の誕生日だからと、錆兎の仕事は真菰が変わってくれたらしい。

家族の誕生日…という意味では真菰だって家族なのに?と義勇が不思議に思っていると、胡蝶姉妹や宇髄の嫁たちが協力して後片付けをしてくれて綺麗になった部屋の中で、錆兎が突然、
「義勇、ここに座ってくれ。
俺も誕生日の祝いを渡したいし話もしたい」
と、大きな机の前に座った。

なんだか改まった態度に少し緊張する。
が、義勇はぺたんと同じく机を挟んだ錆兎の正面に座った。


「確認をしておきたい…」
「…うん……」

「俺は…18でお前を娶るために柱にまでなった。
当初思い描いていた通り、柱になって4年間、給与もそれなりに貯めているし、俺に何かあれば恩給も出るらしいから、おそらくお前に不自由をかけず養える程度にはなっていると思う。
そしてもちろん俺の気持ちは今でも変わってない。
俺は次の誕生日になったらお前を娶りたいと思っている。
が、もちろんお前の気持ちも重要だ。
あの狭霧山での生活の中では男は俺と鱗滝さんしかいなかったし、街に降りてからは色々な人間に会ったと思う。
お前はそれでも俺を選んでくれるか?
俺は嫁にするなら絶対にお前がいい。
一生全力で守っていくし大切にする!」
と言い切ったあと、少し声のトーンを落として
「でも…お前が大切だから、俺がそのつもりで生きてきたからと言ってお前に無理強いはしたくない。
どうしても嫌だということなら、来世まで待つ」
などと言って困ったように眉尻を下げて笑う。

「嫌なわけないっ!
ずっとっ!ずっと待ってたっ!!
錆兎が18になって嫁にしてくれるのを待ってたからっ!!」

錆兎の嫁になりたくない女なんてこの世にいるわけがないっ!
そう強固に主張してみると、錆兎は
──別に他の女はどうでもいいんだけどな。義勇が俺の嫁になりたいと思ってくれれば…
と、笑う。

「じゃあ…改めて言う。
2か月後…俺が18になったら、正式に俺の嫁になってくれ」
「喜んでっ!!」

錆兎の言葉に身を乗り出すようにして即答すると、錆兎はその指に綺麗な青い宝石のついた指輪をはめてくれる。

「…これは…?」
と、指輪のはまった手をかざすと
「婚約指輪。
結婚指輪はもっと簡素で普段もつけていられるようなものを用意するつもりだ。
あと…これは誕生日の贈り物」
と言って、錆兎はこちら側に回ってきて義勇の首に指輪と揃いの青い宝石のペンダントをかけてくれた。

しかしそれに続いてかけられた言葉は思いも寄らぬもので、義勇は固まってしまう

「下世話な話になって申し訳ないが、これらはきちんとした店で買った鑑定書付きの高価なものだ。
売ればかなりの金になる。
こんな仕事をしていれば万が一もあるだろうからな。
お前が余生を過ごせるくらいの金も残すつもりだが、もし俺が死んだら俺の思い出ごとそれを手放して、その金も足して新しい幸せを見つけて生きてくれ」

…できれば俺がお前を幸せにしたいが、それが出来なくなったからと言ってお前にずっと幸せにならないでくれと言うほど、小さな男ではないつもりだ…

と、さらに続けられて、義勇は

──ふざけるなっ!!!
と、泣きながら叫んだ。

「私は錆兎だけの嫁だっ!!
これは絶対に手放さない!!錆兎が私にくれた幸せの証だっ!!
そうして来世も…何度生まれ変わっても、錆兎だけの嫁になるんだっ!
私の気持ちはそんなに軽いものじゃないっ!!」

実際…前世でも義勇にとって一番は錆兎だった。
それは絶対に変わるものではない。

もしいつの世かに錆兎が他の誰かを選ぶことがあったとしても、自分の方が錆兎以外を選ぶことなんてありえない。
そのくらいなら一人でひっそり生きていく。

「…すまん…めでたい日なのに泣かせてごめん…」
と、錆兎が義勇を抱きしめた。

「でも…本当に義勇を不幸にしたくない。
義勇にはいつだって幸せでいて欲しいんだ…」
と言う錆兎を義勇は
「錆兎は馬鹿かっ。
錆兎がいなかったら私の幸せなんてあるわけがない。
錆兎がいない時点で、全世界の全男を好きにできたとしても私は世界で一番不幸だ。
私に幸せで居て欲しいというなら、錆兎が気合と根性で死ななければいい」
と、涙目で睨む。

それに錆兎は少し笑みを浮かべて義勇の額に口づけて言った。
「ああ、そうだな。確かにそうだ。
義勇を守るというなら俺はたとえ1分1秒でもお前より長く生きて、ちゃんとお前を看取ってやらないとダメだよな。
バカなことを言った。ごめん」

「わかればいい…」
義勇はそう言って錆兎を抱きしめ返す。

前世ではまだ少年で細かった錆兎の体は、今生ではしっかりとした大人の男のそれになっていて、前世であの少年期に死んでしまったのだと思い出すと、また涙があふれてきた。

今生では前世で死んだ最終選別は超えたものの、まだ上弦戦やそれこそ無惨戦も残っている。

でも、絶対に…絶対に錆兎だけは死なせるものか!
と、義勇は改めてそう固く心に誓うのだった。




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