少女で人生やり直し中_18_きつねっこ達ときつねの面

「さびと、さびと、私は何をすればいい?
これだと刀が振るえない」

結局、きつねっこ3人とその同期の村田、そして宇髄が5人一班で中央から入って館の左側の棟を、津雲他4名の計5名の班が右側の棟を探索することに決定し、それぞれ左右に分かれてすぐ、きつねっこ達の末娘だと言う囮役になった青い目の愛らしい少女が小振袖の袖口を揺らしながらぴょんぴょん飛び跳ねて聞く。

確かに。
その格好じゃあ刀は振れねえよなぁ…
と、苦笑する宇髄。

それ以前に少女はまとう空気もぽわぁんとおっとり愛らしく、普通の隊服を着ていても果たして刀なんて振れるのか?と思ってしまう。

津雲とのやりとりでは少しばかり困った顔を見せていたきつねっこの唯一の少年錆兎が、そんな妹弟子に津雲の時とは別の、少し親愛と安らぎの感じられる苦笑と共に

「そうだな…。
義勇はいつもの通り俺の後ろにいろ。
せっかくお借りした振袖を汚さないようにな?」

などと言うので、もしかして真面目に戦えない系なんだろうか?と不安になってくるが、そんな宇髄の心境を察したのだろうか…きつねっこの最後の1人、花柄の羽織の少女が

「…大丈夫。
さっきも言った通り、私達が最終選別に出してもらえる条件は、あの扉みたいに身の丈よりも大きな岩を一刀両断できることだし、義勇もその例外じゃないから。
錆兎はもちろん、私も義勇もあの門くらいなら斬れるよ?」
と、視線は兄弟弟子達に向けたまま、独り言のように言った。

「へえぇぇ、すげえな、それは」
と、宇髄はその言葉に素直に感心する。

しかし驚くのはそれだけではなかった。

「心配しないでも私達はそれなりの隊士くらいの剣の腕はあるし、錆兎は鱗滝さんが自分が教えた子どもの中でも一番強いって言ってた子だから。
”音柱様”1人で戦うはめにはならないと思う」

「えっ?!!」

正直バレているとは思っていなかったので、今度こそ本当に驚いて宇髄が自分の腹くらいにしか届かない小さな少女を見下ろすと、彼女はそこで初めて宇髄を見上げて視線を合わせる。

「大丈夫。それに気づいているのはたぶん私だけ。
錆兎は宇髄さんの強さには気づいていても身分までは知らない。
義勇は何も気にしてない。
単に…私はみんなの目であり耳だから。
常に情報は収集しているし、整理もしてる。
だから、私達のことで聞きたいことがあれば私にね」

「りょ~かい。えっと…」
「真菰」
「ほいよ、真菰。
さっそくだが…」
「…?」
「お前さん達がすげえ強いのはわかった。
てか、天狗の爺さんの弟子はみんな強いんだよな?
なのにこれまで最終選別を超えられなかったのは何故だ?」

そう、そこである。
真菰のいう事が本当なら、他の候補者よりははるかに強い…もっと言うなら、最終選別の藤襲山にいるような弱い鬼なら瞬殺できるであろう鱗滝左近次の弟子達がこれまで一人も選別を超えられなかったのは謎である。

もしかして何かのタイミングでとてつもない弱点を晒してしまうとかがあるのだろうか…
そこは今後のためにも知っておかねばならない…と思って尋ねると、真菰は愛らしい顔に複雑な表情を浮かべた。

「あのね…」
「ああ?」
「嫌がらせなのかわざとなのか手違いなのかわからないんだけど…」
「おお?」
「藤襲山には弱い鬼しかいないって話だったのに、一体だけ江戸時代から数十人は人を食べてる鬼が混じってたんだけど?
その鬼は先生と戦って敗れて藤襲山に放り込まれたらしくて、先生を恨んでてね、先生の弟子を狙って殺してたんだって、鬼本人が言ってた」
「え???そんなの聞いてねえけど?」
「聞いてて放置してたんなら、宇髄さんのことも同罪認定するところだよ」
「いやいやいやいや、それ、たぶん…いや、絶対に手違いだって。
お館様の人間性を語っても意味ねえけど…少なくとも鬼殺隊からすると、隊士として経験を積むことで役に立ってくれるだろう優秀な候補者をわざわざ選んで殺させる意味はねえだろ?」
「…そうね」

焦る宇髄に淡々と答える真菰。
その冷静さに宇髄は彼らしくもなく焦った。

「あ~…悪かった。
俺が何かできたわけじゃあないけど、まあ団体の頂点に近い人間だからな。
謝っとく。
そいつぁ悪い事したわ。
とりあえずお館様の許可取って俺が責任もって排除しとくからな?」

彼女達が最終選別を超えてからはまだ次の選別は行われていないが、それは早急に対処しないとならない問題だ。
そう思って言ったのだが、真菰はそれにもあっさり

「必要ないわ。
もう錆兎が倒したから」
と、もう驚くような事実を告げる。

「…江戸時代から生きてる鬼を?」
「…そう」
「…数十人は食ってる鬼を?」
「…そう」
「隊士にもなってないような子どもが?」
「うん、そうだね。
でも隊士以上の子どもだよ。
だって先生が先生を超える子どもだって言ったんだもの。
誰よりも強い先生がそれ以上って言うなら、少なくとも鬼殺隊一になってもらわないと困るし」

先生…と口にする時だけは、淡々としている真菰の言葉に力が入る。
おそらく彼女は誰よりも自らの師範を尊敬…というか、もう崇拝しているのだろう。

「あ~…だから、任務の時、いつも天狗先生の弟子だってわかるようにキツネの面を?」
と、聞くと、
「そう。これは先生が弟子のために彫ってくれる弟子の証だから。
錆兎がどれだけ活躍して、いつか鬼殺隊を背負って立つようになったとしても、これだけは外させない」
と、言う言葉から、どうやらきつねっこ達が面をつけ続けるのは主にこの彼らの中での一番の姉弟子であるお嬢ちゃんの厳命だったのか…と、宇髄は内心苦笑した。



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2 件のコメント :

  1. 桃太郎と並行して読んでるとちょっとした違いで色々違っていておおっ❕と思いますね(*´▽`*)
    因みに誤変換報告です。「弟子のために掘ってくれる」→彫ってくれる かと…ご確認ください。

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    1. 最初の任務、人生やり直し中と桃太郎、どちらのにしようかと悩んだんですが、リクエストで宇随さんと一緒になったので、桃太郎の方にしてみました😁
      ほる…そう、彫るですね💦
      ご指摘ありがとうございます。
      修正しました✨

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