学園警察S&G_23_エピローグ(完)

 結局…長谷川はその後自首をして、全てを自白した。

動機は痴情のもつれ。
長谷川は木村に手を出したものの、別の生徒が気になりだして木村に別れを切り出したが、別れるなら関係を学校側にばらすと脅されて殺そうと思ったらしい。

別れ話をいったん撤回して謝って、実は田中に誘惑されたと嘘をつき、木村に田中を挑発させて、トリックを決行したことも自供した。


「ひでえ話だなァ」
「全くだよなぁ。これだからモテねえ男は…」

錆兎と義勇の部屋に当たり前に4人集合して、二つのパピコをそれぞれ半分こして、ひそかにお疲れ様会をしながら、錆兎がひそかに産屋敷から聞いた長谷川の自供について聞いて、不死川と宇髄はご立腹だ。

「まあ…花壇に氷捨てたなんて嘘あっさり信じてくれて良かったけどな。
本人が自供しないと証拠はもうないし…。」
「まあな~。結構危ねえ橋だったよな」

犯人が動く前提での罠だったので、かかってくれなかったら立件出来ないところだったのだが、花壇前で土を入れ替えているところ、そして不死川の部屋に忍んできてからの一連を動画で提出しているので、なんとか収まったというところだ。
まあ事実が明らかになれば多少強引な事もやるのが”裏教育委員会”なわけだが…。



「まあ終わり良ければ全てよしってことで。不死川の濡れ衣も晴れたわけだしな」

終わった事件に関しては本当にどうでもいいらしい…というか、今回の事件で義勇との距離が著しく縮まって機嫌の良い錆兎がそう言うと、それまで黙ってうつむき加減でパピコをくわえていた義勇が顔をあげた。

「でも…やっぱり俺か錆兎が事件の追い込みやった方が良くなかった?
別に不死川が悪いわけじゃないのに、居にくくならない?」
「あー、でも誰がやっても同じだろう?」
「ん~、でも俺や錆兎は親が転勤族だから結構転校繰り返すし…ずっとここにいなきゃなんない不死川はやっぱりつらいだろ?」
と、義勇にしては随分と気遣うのは、やはりこの学校の学生で最初に助けてもらった相手だからか。

「ん~でもまあ殺人犯と思われてるよりはやりやすいぜ?」
と、どこかすっきりした顔で言う不死川を義勇がじ~っと見た。

「不死川…弟探したいならこの学校でなくても俺達とくればいいんじゃないか?」
「へ?」
「義勇!!!!自重しろっ!!なんでお前は俺の失敗に学ばないっ?!!!!」

慌てて錆兎がその口を塞ぎにかかるが、義勇は口を手のひらでふさがれたままきょとんとしている。
そうして少し間を置いて、アッという顔をした。

それに不死川はわけがわからないという顔をしているが、宇髄は何か感じ取ったようだ。

「お前らさ…普通に親の転勤とかじゃなくて、何かの意図があってうちの学校に来たわけな?」
と、容赦なく突っ込みを入れられて、錆兎はとぼけようとしたが、義勇がへにゃりと困った顔で

「ごめん、バレちゃった。
どうしよう、錆兎…」
と、認める発言をしてしまって、

「義勇…その発言、完全にアウトだ。ここはとぼける所だったと思うぞ?」
と、錆兎は片手で顔を覆って天井を仰いだ。
義勇はそれにまた、…あ……と、自らの手で口をふさぐ。


「不死川はとにかくとして、だ、」
と、それで自身の発言の裏付けが取れたと、宇髄が身を乗り出した。

「以前錆兎には言ったが、俺には探してえ奴がいる。
あちこちの学校を転々と出来るシステムがあるなら、乗らせて欲しい。
うちの学校の件を見る限り、危険付きではあるんだろうが、幸いにして護身術は身につけてるし、自分で言うのもなんだが実家は資産家だから、物品でも情報でも色々調達可能だぜ?」


「何の話だ?」
「…お前…自分でもわかってんだろ?
もうここまで言ったらとぼけんのは無理がねえか?」
「……」
「状況を完璧に把握してるわけじゃねえけど…俺が加われるなら、何かあってもお前の姫さんの安全を優先してやってもいいぜ?」
「……」
「……」
「…話を通すだけは通してやる。
…が、付く仕事は選べるわけじゃないし、危険もあるから、後悔しても知らないぞ」
「よっしゃあっ!!」

結局諦めてそう言う錆兎を、今度は不死川がじ~~っと凝視している。

「…不死川もか…?」
と、ため息をつく錆兎。

「…もしかして…バレたら錆兎に失点みてえなのがあんのか?
そうじゃねえなら……」
と、こちらはまず錆兎の都合を気にしているらしい。

「評定とかがあるかないかと言われればあるのかもしれんが、わからん。
少なくとも俺は義勇の時に一度身バレをやらかしてるが、待遇に変わりはないな」

と言う錆兎の横で、義勇が

「錆兎はエースだからっ!
事務方の先輩が言ってたけど、スタッフの中で任務達成率100%なのは錆兎だけだって!
だから、上層部も錆兎の要望はたいてい通してるんだって!」
と、どこか誇らしげな顔で嬉しそうに言う。

「…らしいぞ?
で?お前もか?」
と、そんな悪びれない義勇に、はぁ…とため息をつく錆兎。

そのため息に不死川は少し気まずげに、
「…俺は…宇髄と違って実家の後押しとかねえんだけど……」
と、うつむいた。

「必要なのは、覚悟と度胸と努力する気持ちだ」
「…え?」

「今回、犯人を追い詰めるという緊張する状況下で、俺が説明したことを一言一句もらさずに記憶して、それを緊張を犯人に悟られることなく披露できた記憶力と度胸は俺も認めている。
不死川の場合、この学校で常に上位ってことはどこの学校に放り込まれても大丈夫な学力もあるからそれをキープすることと、あとはそうだな…日々の鍛錬で暴力に訴えてくる相手に対応する力をつけることと。
それをやり続ける気があるなら、口をきくが?
一応な、公務員だからキツイし危険だが待遇は悪くはない。
給与もちゃんと出る」

「た、頼むっ!!
努力ならいくらでもするからよっ!」

あちこちに行けて給与まで出るとなれば、不死川に躊躇する理由など何もない。
こうして学園警察に引き込まれ組が二人ほど増える事になった。


「…宇髄天元に不死川実弥…ね。
錆兎は能力的に優秀なだけじゃなくて、面白い子を見つけて来るね」

その分対応できる仕事が増えて良いね、と、報告を受けた産屋敷はにこりと微笑む。
そしてまた、山と積まれた案件の束から次の依頼書をひょいっと選び出すのだった。


──完──







4 件のコメント :

  1. 多分、誤変換報告です。「増えてよね」→増えて良いね …^^;かなと。ご確認ください。

    返信削除
    返信
    1. ご指摘ありがとうございます。
      修正しました✨

      削除
  2. 学園警察、本格始動!こうやって柱の仲間が増えていくのでしょうか。楽しみです♪

    返信削除
    返信
    1. 増えていく仲間もいれば、すでにスタッフの仲間もいる感じですね😁

      削除